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 前パートで解説した通り、自動車の軽量化を進めるために鋼などの代替としてプラスチックを採用する動きが急だ。その中で異種材料接合技術に求められ始めた機能が密着性と、それによる気密性や防水性である。

 例えば、自動車のエンジンを冷却する不凍液やオイルが流れる部品で密着性のある異種材料接合技術を用いれば、ガスケットやパッキンを削減できる。内部に回路基板を搭載する電子制御ユニット(ECU)などのきょう体に利用すれば、故障の要因となる液体や気体の侵入を防げる。海外では、車内を高圧水などで洗浄するケースがあり、こうした使われ方を想定して内装部品にも高い防水性を求める部品メーカーも現れている。

 これらの動きを受け、プラスチック材料メーカーや加工会社が気密性や防水性の高い異種材料接合技術を開発。実用化が秒読み段階に入っている。

アルミとポリアミドを熱圧着

 プラスチック材料の製造を手掛けるデュポン(本社東京)は、高い気密性を確保してアルミニウム(Al)合金とポリアミド(PA)を直接、接合する異種材料接合技術を開発。現在、気密性や強度の試験を終えて、完成品の検査技術や製造コストを下げる工程の確立を急いでいる(図1)。

図1 アルミ合金とPAを圧着させたサンプル
図1 アルミ合金とPAを圧着させたサンプル
Al合金にもPAにも化学的に結合する物質を、Al合金材の表面に塗布。そこに射出成形したPA材を押し付け、熱と圧力を加えて接合する。(出所:日経ものづくり)
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 Al合金にもPAにも化学的に結合する物質を、Al合金の表面に塗布*1。そこにPA材を押し付け、熱と圧力をかけて接合する。デュポン パフォーマンス マテリアルズ事業部 用途開発部部長の森博志氏は、「界面で強固に化学的結合するので、気密性や防水性が高い」と話す。接合に当たって、Al合金の表面にサンドブラストで凹凸を付けるといった物理的な処理は不要だ。通常のAl合金材をそのまま利用できる。

*1 塗布する物質の層の厚さは、「フィルムと言えないくらい薄い。この物質自体の強度は、接合強度には影響しない。接着剤とは異なる概念だ」(デュポン)という。

 想定している用途は、エンジン冷却系の部品とみられる。「例えば、クルマの内燃機関に近い熱環境が厳しい部分で、冷却サイクルに使われる部品だ。エンジンオイルやトランスミッションオイルがある部分も対象だ。従来、オイルが漏れないように蓋でカバーしていたり、オイルを絶対に漏らしてはいけないので金属材にガスケットやパッキンを組み合わせていたりする部分で、防水性と軽量化を両方確保できる代替技術として売り込みたい」。森氏は新開発の異種材料接続技術に対する期待をこう語る。