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写真:Tokyo 2020
写真:Tokyo 2020
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 1964年以来56年ぶりに東京で開催されるオリンピック・パラリンピック。会期はオリンピックが2020年7月24日~8月9日、パラリンピックが同年8月25日~9月6日と、開幕まで半年を切った。大会の主役はもちろん、世界から集まる代表選手たち。ただし4年に1度の巨大なイベントだけあり、大会に関連してさまざまな技術が開発され、注目を集める場になっている。日本の技術力を世界にアピールする絶好の機会だ。

 オリンピック・パラリンピックに向けて開発された技術が活躍する場面は大会期間中だけではない(図1)。選手やチームを強化するトレーニングや聖火リレーのようなイベントなど、大会開幕前から活躍する技術も多い。大会が開幕した後も、選手が競技で使う用具に加えて、競技の進行や観戦といった運営面で大会を支える設備/システムでの技術革新が進んでいる。

図1 オリンピック・パラリンピックに向けてものづくり技術が寄与する3つの場面
図1 オリンピック・パラリンピックに向けてものづくり技術が寄与する3つの場面
競技に参加する選手が身に着ける道具だけでなく、競技を公平かつ安全に実現するための会場の設備や運営・観戦をサポートする装置やシステムなどでも新技術が適用されている。さらに、聖火リレーなど本番前のさまざまなイベントや大会前のトレーニングでも技術が競い合っている。(出所:左上から日経ものづくり、大田区、早川俊昭、筑波大学教授岩田洋夫氏、日経ものづくり、日経クロステック、日経ものづくり)
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 近年、「スポーツテック」という言葉がよく使われるようになってきた。スポーツとさまざまな技術の融合によってスポーツを進化させ、新しいサービスや製品、市場を生み出そうというものだ。人工知能(AI)やビッグデータ、IoT(Internet of Things)、5G(第5世代移動通信システム)といったICTとの組み合わせの事例を見聞きした人も多いだろう。もちろん、ICTだけでなくハードウエアの世界におけるものづくり技術もスポーツテックには不可欠だ。本特集ではそうした技術を中心に取り上げる。

Preparation
開幕前から活躍する技術

 東京オリンピック・パラリンピックが開幕する前にも、さまざまな新技術が大会に向けて開発され、活用されている(図2)。その1つが、2020年3月から国内で始まる聖火リレーのトーチだ(Part1 聖火リレー[トーチ]参照)。桜の花びらをモチーフとした「聖火リレートーチ」は、日本の高度なものづくり技術があったからこそ実現したとも言える作品だ。オリンピック用に約1万本、パラリンピック用に約1000本の聖火リレートーチが製造された。

* 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の正式名称は「東京2020聖火リレートーチ」。
(a)聖火リレートーチ
(a)聖火リレートーチ
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(b)バレーボールのブロックマシン
(b)バレーボールのブロックマシン
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図2 開幕前から活躍する技術
開会前の大きなイベントとなる聖火リレーは2020年3月から始まる。そこで使われるトーチは、日本の高度なものづくり技術の結晶ともいえる作品だ(a)。また、日本代表として好成績を収めるためのトレーニングで使われる技術も進化している。バレーボールでは外国勢の高いブロックを再現するブロックマシンで反復練習に余念がない(b)。 (写真a:早川俊昭、b出所:筑波大学教授岩田洋夫氏)

 デザイナーが求める複雑な形状を実現するため、新幹線の車体の製造で培われたアルミニウム合金の押し出し成形技術が生かされた。オリンピック用とパラリンピック用で異なる微妙な色合いをアルマイト処理で実現。そして、風や雨、気温などに関する厳しい条件、例えば風速17m/秒の中でも燃え続けるだけでなく、炎の色や大きさにも配慮した燃焼バーナーの技術も注目に値する。デザイン性を損なわないために小型化にも苦労した。

 大会の開幕前に技術が活躍する場としては、オリンピック・パラリンピックで最高の成績を収めるために実施するトレーニングもある。限られた時間の中で選手個人のパフォーマンスやチームの連携などを効率的に高めていくためのものだ。

 例えば、バレーボールの日本代表チームが練習で使っている「ブロックマシン」(Part1 バレーボール[ブロックマシン]参照)は、 男子ブラジルチーム並みの高さ3.2mのブロックを3枚、位置や高さ、腕の向きなどを臨機応変に変えながら再現できる。従来は体感できない練習を難度でも繰り返せる。

 また、フェンシングでは選手の動きと考え方を合わせて分析する動態解析システムの開発が進む(Part1 フェンシング[動態解析システム]参照)。3D計測技術と、技能伝承の場面で培われた人工知能(AI)を組み合わせたものだ。