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作品No. 002 企業名 コベルコ建機 大垣事業所
作品名 「かぱぁ」と都合のいい台車 ~スライドワイドトロリー~
・ワークの重みとばねの力で操作不要に
・てこの原理で可動/固定の切り替え楽々

 コベルコ建機の作品は、ワークである組み立て中の建機の座席を運ぶための手押し台車(図1)。使わないときは幅を縮めてコンパクトに収納できるのが特徴の1つだが、それ以上に機構としてユニークなのは、特殊な操作を必要としない3つの安全機能だ。具体的には、[1]ワークの落下防止、[2]台車の固定忘れ防止、[3]台車の横転防止の3つの機能を搭載する。[1]と[2]は従来のワーク搬送台車にも搭載していた機能を改良。[3]は新たに考案した

* 本作品は「からくり改善くふう展」で「努力賞」を受賞した。
今回出展した台車
今回出展した台車
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従来の台車
従来の台車
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図1 コベルコ建機が出展した手押し台車
今回出展した台車(左)と従来の台車(右)。新しい台車には、[1]ワークの落下防止、[2]台車の固定忘れ防止、[3]台車の横転防止の3つの安全機能を搭載した。また、工場の限られた場所に収納するため幅を縮められるようになっている。質量が200kgほどある建機の座席を運ぶのに使う。(写真:日経ものづくり)

落下防止の「つめ」が働く

 まず[1]ワークの落下防止の機能を紹介しよう。従来の搬送台車では、ワークを載せる面の4辺のうち1辺に、人が手で動かす落下防止の棒状のフレームを設けていた。このフレームの一端はヒンジで台車と接続してあり、踏切の遮断機のように上げたり下げたりできる。ワークを積み込む際にはフレームを上げて通り道を作り、搬送時には下げてワークの落下を防ぐ。作業者はワークを積み込むごとに、フレームを上げ下ろしする必要があった。

 新しい台車には、この手間をなくす改良を加えた。側面から見てみよう(図2)。前後に摺動する「スライド棒」と、ワークの落下を防ぐ「つめ」が滑車を介して「ひも」で接続してある。スライド棒は、「引っ張りコイルばね」(以下、ばね)によって普段は台車の前方(図6では左方向)に突き出ている。このとき、つめは上を向いて立っている状態だ。

図2 ワークの落下を防止する仕組み
図2 ワークの落下を防止する仕組み
台車を側面から見た。ばねの力とひもの動きを巧みに利用している。(コベルコ建機の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 ここで台車を前進させる。ワークが置かれた机にスライド棒が接触すると、台車の内部(右側)に引っ込む。この時、ひもでつながったつめが回転し水平方向に倒れる。すると、ワークを机から台車に載せる通り道が開く(図3)。

図3 つめとスライド棒
図3 つめとスライド棒
スライド棒を机に押し当てて引っ込めると、これに連動して落下防止のつめが倒れる。(写真:日経ものづくり)
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 台車を後退させて机から離れると、スライド棒と台車のフレームの間に設けたばねの力によって、同棒は元の位置に戻る。ひもが緩めば、つめは再び上を向き、ワークが滑って台車の前方に落下するのを防ぐというわけだ。作業者は台車を机に押し付けてワークを載せて運ぶだけ。台車を机から離せば落下防止のつめが機能するし、台車からワークを下ろす際には机に押し付けるだけでつめが解除される。手間なしにワークを安全に運べる。