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羽根でクリップを混ぜる

 クリップは使いたいときにあらかじめ向きをそろえて整列させてあると、組み立て作業の際に取り出しやすく便利だ。そのため、同社の稲沢工場(愛知県稲沢市)では従来、大型のパーツフィーダーを用いて、クリップを「レール」に整列させていた。しかし、作業者はこのレールを1本ずつ手で入れ替える必要があり、作業に時間がかかっていた。そこで、複数(図5では4本)のレールに、同時にクリップを整列させるからくりを考案した。

 その仕組みを見ていこう。まず、クリップを円筒形の容器に入れる。容器の中央にはモーターで回転する「撹拌(かくはん)羽根」があり、クリップを常にかき混ぜている。羽根の回転方向は一定時間おきに切り替わるため、クリップは容器内部でランダムに位置を変えたり、向きを変えたりする。撹拌羽根には結束バンドを採用した(図6)。長さを調節しやすく、柔らかいため「クリップを傷つけない」(同社)からと言う。

図6 クリップと撹拌(かくはん)羽根
図6 クリップと撹拌(かくはん)羽根
結束バンドで造った撹拌羽根が容器内のクリップをかき混ぜる。(写真:日経ものづくり)
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 円筒形の容器を含め、Sサイズ フィーダー PARTIIは床面に対して傾斜して配置してある(図7)。同容器には、直立した状態のクリップだけが通過できるように溝を切った部品が接続してある(図8)。つまり、溝の入り口付近に集まったクリップが直立していれば、この溝を通過する。そして、溝の先にあるレールへと徐々にたまっていく。

図7 パーツフィーダーを側面から見た様子
図7 パーツフィーダーを側面から見た様子
かき混ぜたクリップがたまたま直立姿勢を取った時に、溝を通過してレールに入る。(取材を基に日経ものづくりが作成)
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図8 クリップが通過する溝
図8 クリップが通過する溝
説明用に透明なアクリル樹脂で造った溝部。この写真のように直立姿勢を取れずに上手く溝を通過できなかったクリップは、再び撹拌羽根によってかき出される。(写真:日経ものづくり)
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 ただし、クリップが溝の入り口付近で直立するとは限らない。直立していない「悪い姿勢」で溝の入り口にはまることもある。すると、クリップはレールまで流れず溝の入り口で詰まってしまう。そこで、「悪い姿勢」のクリップをかき出す役割を果たすのが、溝の入り口まで届く長さを持った撹拌羽根だ。この羽根の回転により、溝にはまったクリップは取り除かれて、再び撹拌される。つまりクリップのどれかが溝の入り口付近で直立姿勢をとるまで、円筒容器の中で撹拌が繰り返されるわけだ。

 こうしてクリップは複数のレール上にランダムにたまっていく。早く埋まるレールもあれば、そうでないレールもある。しかし、全部埋まったレールにそれ以上クリップは入らないから、別の空きのあるレールにクリップが送り込まれる。つまり撹拌羽根を回し続けるだけで、いずれ全てのレールがクリップで埋まる。その時点でモーターを止め、あとはレールごとクリップを取り出せば、決まった数の向きのそろったクリップが並んだレールが一度に4本得られる。

モーター1個のシンプル機構

 この作品の優れた点は、アクチュエーターとして、一定時間おきに逆転を繰り返すだけのモーターを用いたところだ。複雑な制御システムなしに、定量のクリップを取り出せる。何らかのセンサーでクリップの個数を数えたり、ロボットでピッキングしたりする必要もない。ただモーターの電源を入れるだけで稼働し、たまれば止める。非常にシンプルだ。

* モーターの回転方向の切り替えは、モーターコントローラーで自動制御している。

 稲沢工場では、とある組み立てライン1カ所あたりに、クリップをそろえたレールを8本ほど並べて組み立て作業に当たっているという。Sサイズ フィーダー PARTIIは、そのような現場の状況に応じて、レールの数を簡単に調節できることもメリットだ。