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 SAR(合成開口レーダー)を搭載した小型衛星による衛星コンステレーションの構築に向けて活動している宇宙ベンチャー4社*1のうち、現在最も先行しているのがフィンランド・アイスアイ(ICEYE)だ。2018年1月に、実験衛星「ICEYE X1」を打ち上げ(図12)、2019年10月からは「ICEYE X2」と「ICEYE X4」、「ICEYE X5」の衛星3機体制による、SAR衛星で撮像したデータの一般向け販売を開始している。SAR衛星コンステレーションとしては、最初に事業化に踏み出した企業だ。

*1 フィンランド・アイスアイ(ICEYE)と米カペラスペース(Capella Space)、日本のSynspetive(シンスペクティブ)、QPS研究所。
図1 ICEYE X1の外観
図1 ICEYE X1の外観
アイスアイ初の衛星「ICEYE X1」。横方向に大きく広げているのがSARのアンテナ。(出所:アイスアイ)
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図2 ICEYE X1のSARが撮像した画像の例
図2 ICEYE X1のSARが撮像した画像の例
米アラスカ州ノアタク周辺。(出所:アイスアイ)
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 これらのSAR衛星は、SAR衛星コンステレーションを本格運用するための試験機だ。同社は次のステップとして、18機のSAR衛星の衛星コンステレーションによる高頻度地球観測を目指している。

「1m2単位、1時間単位」を可能に

 同社のSAR衛星事業は海氷観測から出発した。しかし、現在のキャッチフレーズは“Every Square Meter, Every Hour”(1m2単位で、1時間単位で)。地球全面の「高分解能観測」と「高頻度観測」という強みを前面に打ち出している。というのも、現在運用中のICEYE X2など3機が搭載しているSARは、特定地点を精密に観測する「スポットライトモード」では分解能1mで観測できる機能を持つからだ*2。つまり、地表の1m2の範囲を特定して撮像できるのである。

*2 広範囲を一度に観測する「スキャンモード」では分解能20m。

 同社はこうした「高分解能、高頻度」で観測したデータを、さまざまな業界がさまざまな用途で利用できるとしている。例えば、保険業界なら自然災害の被害額算定の基礎資料に、金融業界なら油田や鉱山などの採掘状況の把握、船舶や車両の監視による物資輸送量の推定、広域の作物生育状況の監視などに使えるとアピールする*3

*3 同社はこのほかにも、エネルギー産業(オイルパイプラインの健全性監視、海底油田の活動状況の把握、送電線網の健全性監視)、産業全般(船舶、鉄道、車両などの監視による輸送量推定)、海運(輸送船運航状況の監視、海氷監視、風向波高の観測、密輸船の監視・追跡)、行政全般(違法建築の監視、森林生育状況の広域把握、土砂崩れ・雪崩などの監視)といったソリューションを提供できるとしている。