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 受注してから数時間以内にSAR衛星が撮像したデータを顧客に届ける─。これが米カペラスペース(Capella Space)最大の“売り”である。同社初のSAR衛星は2018年12月に打ち上げた「Capella 1」だ(図1)。今後、36機のSAR衛星を打ち上げ、地球上のすべての場所を1時間間隔で撮像可能にして、「オンデマンド」でスピーディーにデータ配信できる体制を整えようとしている。

図1 カペラスペース初のSAR衛星Capella 1
図1 カペラスペース初のSAR衛星Capella 1
面積が100平方フィート(約9m2)もある大型で高感度の展開アンテナを持つ。2018年12月に打ち上げた。(出所:カペラスペース)
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 最大の顧客は米政府系安全保障組織だ。国土の保全や国民の保護を含む、広義の安全保障分野でのデータ利用開拓に取り組んでいる。

静止衛星を介して「すぐ撮像」を実現

 カペラスペースの設立は2016年3月*1。米国務省がSARデータの流通について規制緩和した直後に当たる。同社のセールスポイントであるオンデマンドとは、顧客から撮像の要求を受けるとすぐに撮像体制を組んで指定地域を撮像し、その撮像データを素早く衛星から地上局にダウンロードしてユーザーに届けることを意味する。顧客からSAR衛星による地表の撮像を受注した後、実際に撮像したデータを顧客に届けるまで数時間程度しか要しないとしている。

*1 米国の惑星探査の中心機関であるジェット推進研究所(JPL)に研究者として在籍していたPayam Banazadeh現CEOが立ち上げた。

 「欲しい画像をすぐ届ける」オンデマンド撮像のために、カペラスペースのSAR衛星を特徴付けるのは、静止軌道にある通信衛星と直接通信するための「衛星間通信装置」を装備している点だ。顧客から地表の撮像を受注すると、地上局から通信衛星を介してSAR衛星コンステレーションにコマンドを送信する(図2)。

図2 静止衛星を介した通信システム
図2 静止衛星を介した通信システム
カペラスペースは、「いつでもすぐ撮像」を実現するため、静止通信衛星を経由して、SAR衛星コンステレーションに撮像コマンドを送信する。(出所:カペラスペース)
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 通常の地球観測衛星の運用では、顧客から受注した観測データを得るための撮像コマンドをSAR衛星に送信するには、SAR衛星が地上局の上空を通過するのを待たなくてはならない。極軌道の地球観測衛星の場合、低緯度の局ではSAR衛星との通信可能なタイミングは1日数回程度しかない。高緯度に位置する地上局は低緯度の局よりもSAR衛星と通信できる頻度は高いが、それでも毎周回ごとに1回、約1時間半毎になる。これでは「いつでもすぐ撮像」にはならない。

 静止通信衛星は、地球の自転の周期と同じ周期で公転している。公転しているが、地上から見ると1点に静止しているように見えるのでこの名がある。そこで顧客から撮像を受注すると、常に地上局の上空に見える静止通信衛星に撮像コマンドを送信。その静止通信衛星から、まだ地上局の上空にいないSAR衛星にその撮像コマンドを転送する。SAR衛星が地上局の上空に来るのを待つまでもなく、受注直後に撮像コマンドを送信できるわけだ。

 このほか、具体的手法は未公表だが撮像データの地上局へのダウンロードでも通信を高速化し、大容量データを迅速にダウンロード可能にしているようだ。

 カペラスペースは「いつでもすぐ撮像」だけでなく、「高分解能と高頻度撮影の両立」も“売り”にしている。そのために同社のSARは、高分解能で撮像できる周波数の高いXバンド(8G~12GHz)を使用。アンテナも、同サイズ・同レベルの衛星に比べて大型のものを搭載している。例えばCapella 1は35kgと重量こそ小さいが、面積が100平方フィート(約9m2)もある大型で高感度の展開アンテナを備える。このアンテナを使って、高精細なスポットモードの観測では分解能0.5mの画像を取得する。

 Capella 1は、SARの軌道上実証を行う実験衛星だ。実際の衛星コンステレーション構築では、第2世代の衛星となる「Capella 2」を使用する(図3)。Capella 2は、Capella 1よりも大きい直径3.6mの展開式パラボラアンテナを持つ重量100kgのSAR衛星だ。2020年にまず7機の打ち上げを予定している。

図3 衛星コンステレーションに使われるCapella 2
図3 衛星コンステレーションに使われるCapella 2
実験衛星のCapella 1と異なり、実際の衛星コンステレーションに使用される。Capella 1よりも大きい直径3.6mの展開式パラボラアンテナを持つ。2020年から打ち上げる予定だ。(出所:カペラスペース)
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 Capella 2による衛星コンステレーションは、地球を南北に周回する12の軌道に各3機ずつ、合計36機の衛星を配置する(図4)。これによって地球上の特定地点を、1時間間隔という高頻度で撮像できるようにする。

図4 Capellaの衛星コンステレーション模式図
図4 Capellaの衛星コンステレーション模式図
12軌道面に3機ずつ、合計36機の衛星を配置する。画像右横にセールスポイントとして「4時間ごとにInSAR観測可能(4HOUR INSAR REVISIT)」とあるのに注目。(出所:カペラスペース)
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