全2258文字
PR

 島津製作所は安価な中国製ロボットを使った現場改善に取り組む。採用したのは、中国・シンセン・ユージェン・テクノロジー(Shenzhen Yuejiang Technology)の「DOBOT Magician(以下、DOBOT)」(図1)。教育やホビー用途に設計されたロボットアームだ。可搬質量は最大500g、繰り返し位置決め精度は0.2mm、4軸の自由度を持つ。ステッピングモーターで3個の関節を駆動し、サーボモーターでアーム先端のハンドの向きを調整する仕組みだ。こうした性能だけを見ると、産業用に利用するロボットとしては明らかに見劣りする。

図1 中国Shenzhen Yuejiang Technologyの「DOBOT Magician」
図1 中国Shenzhen Yuejiang Technologyの「DOBOT Magician」
可搬質量500g、質量3.4kg、繰り返し位置決め精度0.2mm、 自由度4軸、アームはアルミニウム合金製。関節はステッピングモーターで駆動する。価格はベーシックキットで13万9000円(税別)。(写真:日経ものづくり)
[画像のクリックで拡大表示]

 DOBOTの最大の魅力はその安さだ。1台当たりの価格は約14万円からと、数百万円する産業用ロボットとケタ違いに安い。導入ハードルが低い分、用途を絞った活用場面を探しやすい。こうした特徴を生かして、島津製作所は今までロボットを適用しにくかった軽作業の自動化を進めている。例えば、「部品の整列作業」「電子部品の小分け作業」だ。これらの取り組みを紹介する。

部品整列を手助けするゆるロボ

 DOBOTを導入した現場の1つが、ステンレス鋼製の軸部品を生産する工程だ。この部品は、同社の液体クロマトグラフ製品*1に組み込むものだ。

*1 試料が含む複数の成分を定性的、定量的に分析する装置。

 NC旋盤での加工を経た軸部品は、ベルトコンベヤーに載ってDOBOTの手前まで運ばれてくる。製造ペースは5分に1本ほどだ。DOBOTはコップ形状のエンドエフェクターを使って軸部品を受け取る。そして、格納ケースの空いた区画に収納する。このケースはビール瓶のコンテナのような形状で、区画ごとに格子状の壁で隔てている。この1区画に1本ずつ、軸部品を納めていく(図2)。

[画像のクリックで拡大表示]
図2 部品整列システムの概要
図2 部品整列システムの概要
システムの外観(a)と、側面から見た動作概要(b)。まず、NC旋盤で加工した軸部品をベルトコンベヤー1で運び、DOBOT Magicianに受け渡す。DOBOTは位置決めした後、格納ケースに軸部品を落とす。ケースには1列あたり6個の区画がある。6個全てに軸部品が入ったら、ベルトコンベヤー2が駆動し、ケースを1列分前進させる。(写真a:日経ものづくり、図b:島津製作所への取材を基に日経ものづくりが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 従来、同社は加工済みの軸部品を、樋(とい)のような滑り台を使って自重で滑らせ、桶状の保管場所に集めていた。しかし、この方法では加工済みの軸部品が保管場所で互いにぶつかり合うため、表面が傷つく場合があった。そのため、回収後に人が目視で検査する必要があったという。

 こうした手間を省くには、加工した部品が触れ合わないよう、1本ずつ個別のケースに入れておけばよい。しかし、今度はこのピッキング作業に人手が掛かってしまう。かといって、産業用ロボットで自動化するのは大げさすぎ、かつコストがハードルとなる。そこで同社が注目したのが、DOBOTだった。

 格納ケースには、縦6個×横11列の合計66個の独立した区画を設けてある。DOBOTはベルトコンベヤーから軸部品を受け取ると、この区画の端から順番に格納していく。ただし、DOBOTが位置決めするのは、高さ方向と縦方向だけだ。格納ケースは別のベルトコンベヤーに載っており、これによって横方向の位置を合わせる。1つの列が6個全部埋まったら、格納ケースを1列分だけ前進して、格納作業を繰り返す。

 一連のシステムは、センサーやベルトコンベヤー、DOBOTを含めて、PLC(Programmable Logic Controller)が全体を制御している。「こうした作業を5分に1回だけこなすなら、200万円のロボットは要らない」。島津総合サービスシニアキャリア部マネージャーの池尻正尚氏はこのように話す。