小型協働ロボット「COBOTTA」を提供するデンソーウェーブは、自社でも人の作業のCOBOTTAによる置き換えを進めている。
COBOTTA自体も生産する同社本社工場の例えば、ICカードリーダーの生産ライン。終盤の組み立てから検査工程で3台のCOBOTTAが自動で作業をこなしている(図1)。具体的には、図1中手前のCOBOTTAが「調整」と「1次組み立て」を、中央のそれが「完成品組み立て」、奥の1台が「検査」工程を担っている*。
導入したのは、2019年10月。それまでは、1人の作業者が行っていたこれらの作業を、3台のCOBOTTAに移した。動作の遅いCOBOTTAだが、3台に作業を分担させるという余裕を持たせた運用で従来と同様の処理能力を確保している。
レゴブロックで治具作成
ケーシングに回路基板をセットしたり、シールを貼ったり、アセンブリーしたり、検査装置にセットしたりと、作業は単純だ。ただし、そこには随所に工夫がみられる。
その1つが「1台のロボットに、ツール(ハンド)を持ち替えながら複数工程の作業をさせる」(製造グループ製造企画室室長の加藤賢治氏)。例えば、調整と1次組み立てを担う1台は、ワークを把持するハンドや、シール貼り用のツール、後述のピン状のものなど4つのツールを持ち替えながら作業をこなす。検査装置にワークをセットする工程を担う奥のCOBOTTAも、検査装置のアタッチメントに応じてツールを持ち替える。
アームが短く作業範囲が狭いという小型ロボットの弱点も、ちょっとした工夫でカバーしている。実は、図1の手前の1台は左右に動くスライダーの上に乗っている。COBOTTAのリーチでは、担当する作業のための2つの作業台に届かないからだ。従って、スライダー上で左右に行ったり来たりしながら作業をこなす。つまり、6軸のCOBOTTAをスライダーに乗せることで7軸操作を実現している。
ただし、このスライダーは動力源を持たない。実は移動の際は、位置決めピンのツールに持ち替えてそれを正面の穴に挿入。そこを支点にアーム駆動力の“反動”で自走する(図2)。
この他、治具の1つであるワークの置き台をブロック玩具の「レゴ」で造っている。ワークが変わって高さに変更があっても、ブロックを足したり引いたりすれば簡単に調整できる。「寸法精度が良く意外と便利」(加藤氏)という。
もともと同工程の設備は将来の自動化を想定していたが、具体的な構成案までは決めておらず人が作業に当たっていた。設置が容易なCOBOTTAを採用したため大きな設備変更はせずに済んだという。