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マイクロマウスは「自動車に似ている」

山田─色々なロボットコンテストがある中でマイクロマウスを選んだ理由は、やはりロボットにタイヤが付くからです。そして自律走行する。マイクロマウスは自動運転の自動車に似ています。少しハードルは高いかもしれませんが、それに挑戦することで、技術者の能力が高まると期待しています。

松井─私は業務でAGV(無人搬送車)の開発を担当しています。マイクロマウスは学生時代から取り組んできました。仕事の開発案件では、「画像屋」「電気屋」「メカ屋」みたいに担当が分かれてしまいますが、マイクロマウスの開発は1人でやり切れる規模感です。例えば、歯車の仕組みからモーターの駆動回路、それを制御するマイコンのプログラミングまで、全部をやってやれないことはありません。ある程度短い期間でひと通り体験できます。実際、1人1台ずつ開発して大会に参加する学生はたくさんいます。

松井祐樹氏
松井祐樹氏
デンソー FA事業部 FA開発室(写真:上野英和)

 優勝を本気で狙うとちょっと別ですが、普通なら開発費用もそれほど高くなりません。ソフトウエアは自分で作るとして、部品代は2~3万円もあれば足ります。大会本番ではマイクロマウスは板の壁で仕切られた広い迷路の中を走りますが、普段の調整に使うコースの板は長さが1mも要りません。つまり、家の中でも開発できるのです。1人で完結するから自分の都合で開発を進められて、チームメンバーの都合をどこかで合わせるような必要はありません。社会人が新しく始めるにしても、学生時代から継続するにしても、まずは取り組みやすさが重要ですよね。

 マイクロマウスの経験が普段の仕事で役立つ場面はあると思います。一般に、新しい製品を開発する仕事は知見が十分ではないところから始まります。どうやって作ればよいのか、初めはよく分からない。でも、仮にAGVを作ろうとしたら、マイクロマウスと似た部分もあるから、少しは知見を生かせる。例えば、モーターでタイヤを駆動するのは変わらないですし、電池を使って走るとか、衝突しない方法とか、共通する考え方があって、参考になる場面はあります。

 もう1つは、現場での対応力を高められることではないでしょうか。例えば、うまく仕上がったはずなのに、いざ大会会場に到着してみると走らないことがあります。すると、現地で何が原因なのかを探らなくてはなりません。そういった経験が仕事にも生きてくるはずで、これはAGVに限った話ではないと思います。

山田─将来的には、デンソーでマイクロマウス大会を定期開催していこうと考えています。加えて、2020年度には「AWS DeepRacer」の社内予選会も開催する予定です。これは、米アマゾン ウェブ サービス(Amazon Web Services:AWS)が提供するAI(人工知能)技術を使って、自律型ロボットを走らせるものです。こちらはどちらかというと、アプリケーション寄りの技術を競うものでしょうか。まずは実際の車両を使わずにシミュレーション上でトップ5人を選抜します。この5人を重点的に育成して夏のAWS DeepRacerリーグ日本大会に送り込み、さらに世界大会1位を狙います。

松井氏が開発したマイクロマウス
松井氏が開発したマイクロマウス
(写真:上野英和)
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山田隆太氏(やまだ・りゅうた)
デンソー ソフト生産革新部 開発体制強化推進室 担当課長
デンソーが開発するソフトウエアの品質を全社横串で統括する活動の傍ら、IoT(Internet of Things)やサイバーフィジカルシステムといった分野に強い人材の育成と採用活動に取り組む。第1回マイクロマウス デンソーカップの実行委員長。
松井祐樹氏(まつい・ゆうき)
デンソー FA事業部 FA開発室
デンソーでAGV(無人搬送車)の開発を担当。学生時代からマイクロマウス大会に出場し、世界上位の成績をキープし続けている。2015年、2016年、2018年、2019年に世界1位を獲得した。