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 災害は長期的な需要も含めた企業や産業の構造的な問題を見直すきっかけになる。例えば、2011年10月のタイの洪水。当社もハードディスクドライブ(HDD)用ヘッド生産で大打撃を受けた。それだけでなく、パソコンのHDDとSSD(ソリッドステートドライブ)の主役交代を促した。SSD化の流れはそれ以前から始まっていたが、タイの洪水が一気に進むきっかけになった。このように災害は、思わぬところで次の世界を形作る契機になり得る。今回の新型コロナは、タイの洪水とは桁違いの影響を及ぼすだろう。

いしぐろ・しげなお:1982年、TDK入社。ヘッドビジネスグループ デピュティゼネラルマネージャー、ヘッドビジネスグループ ゼネラルマネージャーなどを経て、2014年6月に執行役員に就任。2015年4月に磁気ヘッド&センサビジネスカンパニーCEO、同年6月に常務執行役員。2016年6月から現職。(出所:TDK)
いしぐろ・しげなお:1982年、TDK入社。ヘッドビジネスグループ デピュティゼネラルマネージャー、ヘッドビジネスグループ ゼネラルマネージャーなどを経て、2014年6月に執行役員に就任。2015年4月に磁気ヘッド&センサビジネスカンパニーCEO、同年6月に常務執行役員。2016年6月から現職。(出所:TDK)

 実際に我々は新型コロナによって、サプライチェーンだけでなく、リモートワークや働き方改革などの問題を突き付けられている。例えば、これまで日本では通勤時の満員電車から逃れられないと思っていたが、今、当社本社の出社率は10%ほどにすぎない。それでも決して仕事は止まっていない。やればできると分かった。新型コロナで潜在的な課題があぶり出されたわけだ。

1月には危機対策本部を設置

 当社は中国拠点での生産依存度が高いこともあり、1月下旬には危機対策本部を設置していた。旧正月の段階で中国での感染拡大は決定的だったので、日本へ飛び火する前提に立ち、中国や日本の拠点で多数の感染者が出た場合を想定して、その際の対応ルールを決めていた。

 例えば、本社で感染者が出た場合は、その段階で消毒して、リモートワークへ切り替える。工場で発生した場合は、行動履歴や接触履歴を確認した上で、建屋ごとに稼働を止めて封じ込める方針で計画を立てていた。

 リモートワークも、日本で緊急事態宣言が出される前の3月末から実施している。特に本社では管理部門を中心に、どうしても避けられない場合を除いて出社していない*1。出社率は10%程度だろう。研究開発部門のあるテクニカルセンター(千葉県市川市)も同様だ。実験や設備の整備などでどうしても必要なときは出社を認めている。しかし、自宅でもかなりの仕事がこなせる。例えば、CAEなどは自宅から会社のワークステーションにアクセスして実行できる。

*1 一方、秋田県や山形県にある生産拠点では、可能ならリモートワークにするという方針で、作業者らは出勤している。

 技術部門でも臨機応変に対応している。政府が指定した特定警戒都道府県である千葉県内の拠点では、移動が制限されて生産技術や設備設計などの仕事を進めにくいので、秋田県内の拠点の生産技術部門に一部の仕事を任せている。もちろん開発の遅延などのリスクはある。しかし、秋田の拠点との連携や、中国拠点で生産できなかった分を日本で造るなど、各部門が工夫している。