もともと日本は少子高齢化で省人化が待ったなしの状況だったが、これがますます加速する。新型コロナは、高齢化に加えてパンデミック(世界的大流行)のようなリスクを考えた新しい自動化を目指す1つの契機となるだろう。

ただし、これまでの自動化・省人化のニーズとは少し異なる。生産ラインの作業者を全面的にロボットや自動機に置き換えるとコストがかかる上に、対応できる作業が硬直化してしまう。今後求められるのは、人の柔軟性の良さと機械による効率化の良さを合わせた省人化・自動化だ。当社の制御機器事業の「i-Automation!」で掲げているような、人と機械が協調して働く自動化・省人化が今後重要となるとみている*。実際、顧客の現場からもそういった相談が寄せられている。
リモートなら世界のプロが集える
時間と距離の壁を越えてつながるリモートワークは、働き方の改革や価値訴求の変革の大きな可能性を秘めている。人の移動が限られる中で、これまではあくまで可能性として唱えられてきたものを実際に試す機会にもなっている。
例えば、リモートでなら世界に散らばっているプロフェッショナルが集まり、その英知を集結させるのも容易だ。ベテランによるAR/VR(拡張現実/仮想現実)を駆使した技能教育といったものも間違いなく進むだろう。工場見学やショールームへの来訪をオンラインで模擬するのも検討していきたい。
生産現場についても、リスクマネジメント的観点から省人化や分散化を進める上でリモートワークは大きな流れと言える。例えば、稼働データの吸い上げや分析、現場へのフィードバックなどはリモートでもできる。
実際、現在は国内工場などで作業者を減らし、スタッフ業務には在宅勤務も取り入れている。生産技術や設備保全ならリモートで設備を監視・チェックしたり、シミュレーションで確認したりといったことが可能になる。もともと現場にはそうした要望があった。これを機に実践が加速するのではないか。
一方で、やはり直接会ったり現場に行ったりしなくてはならない場合もある。現場でなくては分からないことも多々あるのだ。我々は「i-BELT」という工場のIoT(Internet of Things)化支援サービスを展開しているが、現場、特に生産設備の状態を知るには、何のセンサーをどこに設置し、何を計測するかが重要だ。それこそがノウハウであり、現場に深く入り込まないと分からない。
今後は、現地現物を見る現場主義と、デジタル技術を駆使したリモートとをいかにバランスさせるかが鍵となる。今は、将来を見越してその力を養う時期とも言える。