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 マツダの「モノづくり革新」のベースは、開発部門と生産技術・生産部門との共創にある。その成果が最も大きく表れたものの1つが、自動車のボディーだ。同社は軽量でありながら剛性が高く、かつ低振動のボディーを造る技術を開発して実用化にこぎ着けた。

 ボディーを一層軽くするために、同社は引っ張り強さが1310MPa級の超高張力鋼板(スーパーハイテン)を通常のプレス加工、すなわち冷間プレスで成形した部品をボディーに採用した。2019年5月に市場投入したセダン/ハッチバック「MAZDA3」で世界に先駆けて量産化して以来採用を広げ、SUV(スポーツ多目的車)「CX-30」でも使用している(図1)。材料メーカーであるJFEスチールが鋼板の、新日鉄住金(現日本製鉄)が工法の開発でマツダと組んで誕生した技術だ。

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図1 1310MPa級の超高張力鋼板製ボディー部品
図1 1310MPa級の超高張力鋼板製ボディー部品
(a)外観。手前がヒンジピラーレインフォースメント。奥がフロントピラーインナー。(b)「MAZDA3」のボディーにおける適用箇所。〔出所:(a)は日経ものづくり、(b)はマツダ〕
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 CX-30に使ったのは、板厚が1.6mmのヒンジピラーレインフォースメントと、同1.8mmのフロントピラーインナーである。前者は深さがある上に複雑な凹凸を伴う部品で、成形不良が生じやすい形状。後者は深さが浅く全体が弓形なので寸法精度を出しにくい部品だ。マツダはこれらを、加工が難しい超高張力鋼板を冷間プレス成形して造る。そのための加工技術を開発したのである。

 鋼板は引っ張り強さが大きいほど延性が落ち、かつ降伏応力(塑性変形が始まる応力)が高まって、冷間プレス成形後に元の形状に戻ろうとするスプリングバックの影響が大きくなる。これが成形を難しくする最大の理由だ。

 鋼板を加熱して軟らかくしてからプレス成形する熱間プレス(ホットスタンプ)を使う方法もあるが、加熱する分、生産コストが高くなる。そこで、マツダはできる限りコストを抑えるために超高張力鋼板の冷間プレス成形にこだわった。同社は「コストは従来の1.2倍に抑えた」と言う。