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 デンソーが創業以来の品質の危機に瀕(ひん)している。同社の量産する燃料ポンプで欠陥が発覚。トヨタ自動車(以下、トヨタ)の「メガリコール」の原因となったのだ。トヨタは、2019年9月および20年3月にデンソー製の燃料ポンプを搭載した複数車種のリコールを国土交通省に届け出た。その対象台数は合計で322万台にも上る(2020年4月時点)。

 デンソーがこのリコールで負った賠償金(リコール対策費用)は、実に2200億円だ。燃料ポンプの価格(自動車メーカーへの販売価格)はモジュールで1万円程度、燃料ポンプ単体なら2000円程度とみられる。単価が2000円程度の製品に対し、デンソーは1個当たり6万円超の賠償金を支払うことを余儀なくされたのである。

 「ひどい金額だ。50年来、こんな巨額のリコール対策費用をデンソーが計上したのは記憶にない」と同社出身の元開発設計者で品質保証に詳しい専門家(以下、品質の専門家)は嘆く。トヨタは年間1000万台のクルマを販売しており、その3割以上がリコール対象になった計算となる。

デンソーOBからも厳しい声

 リコール台数はさらに増える可能性がある。燃料ポンプは汎用的な製品で、デンソーはトヨタ以外の自動車メーカーにも供給しているからだ。現に、2020年5月初旬には問題の欠陥燃料ポンプがSUBARU(スバル)の北米市場向けのクルマにも搭載されていたと発覚。これにより、リコール台数は20万2000台増え、342万台を超えた(2020年5月初旬時点)。

 デンソーは「現時点で想定できる金額を引き当てている」とは言うものの、リコール台数がその想定を超えれば、同社が負う賠償金はさらに膨らみかねない。同社取締役社長の有馬浩二氏は「経営において品質は生命線。デンソーの創業の原点に立ち返り、品質の向上に努めていく」と2020年3月期の決算発表の席で謝罪した(図1別掲記事参照)。

図1 デンソー社長の有馬浩二氏
図1 デンソー社長の有馬浩二氏
2020年3月期の決算発表の席でリコール問題について謝罪した。(出所:記者会見オンライン中継)
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 これに対し、同社OBからは「まるで人ごとのようだ」「会社が潰れてもおかしくないほど深刻な損失」「営業利益を前期比8割減に急落させておきながら、責任を感じないなら経営者失格だ」「少なくとも事業部長クラスは更迭されるだろう」といった厳しい声が上がっている。日本を代表するメガサプライヤーに、一体何が起きているのか。

 「なぜ、こんな枯れた製品(部品)で…」。賠償金額の大きさと併せてデンソーOBを驚かせたのは、リコール原因となった燃料ポンプが、以前から造り続けている部品だったことだ。例えばCASE(コネクテッド、 自動運転、 シェアリング、 電動化)関連のような新規性の高い技術を使う部品ならともかく、設計面でも製造面でも枯れた部品が巨額リコールにつながるのは異例だ。