生産現場に限らず、点検や調達、教育などの幅広い分野で製造業のデジタル変革を支援する技術・サービスが充実してきた。人手不足の解消のみならず、新型コロナの感染対策においても活用が期待できそうだ。
味の素エンジニアリング(東京・大田)の「PLANTAXIS(プランタクシス)」は、工場の内部をそっくりそのままスキャンして3Dモデル化し、Webブラウザーから閲覧できるようにするクラウドサービス。レーザースキャナーで測定した点群データを3Dモデルに変換する。位置・寸法精度は±1mmほどという。画面上で新規設備導入におけるレイアウトや修理時の作業のしやすさなどを検討できるため、社内の担当者や外注の施工業者が工場へ足を運ぶ回数を減らせる。設備の高所確認作業もある程度3Dモデル上でこなせるので、足場を組む作業の削減も期待できる。加えて、工事計画やその進捗状況を入力して3Dモデルとひもづけられ、設備管理に関する記録の一元化も可能だ。契約は年単位で、価格は工場の規模や点群データの更新頻度によって年間300万〜800万円。初期費用は不要。
NTTドコモの製造設備分析サービス「FAAP」は、クラウド版の故障予兆・画像検査サービス。5G(第5世代移動通信システム)やLTE〔Long Term Evolution(ロングタームエボリューション)〕を利用して工場内のロボット、FA機器、センサー、カメラからデータを収集し、故障予知や画像検査の結果を返す。5Gを使えば高速・低遅延・多数同時接続という利点を生かして、リアルタイムに大容量データの分析結果を現場にフィードバックできる。ユーザーに近い位置にサーバーやストレージを配置する、いわゆる「MEC(Multi-access Edge Computing)」と呼ぶコンセプトのサービスだ。故障予兆システムには、プラント監視などで実績のあるブレインズテクノロジー(東京・港)の「Impluse」を採用した。NTTドコモが一括してシステム構築と稼働後の運用・保守を提供するため、ユーザーは導入・運用の手間を減らせる。費用は月90万円から、初期費用は900万円前後から。