「経営者のリーダーシップなくしてDXは成功しない」「現場を動かす部長・課長クラスの管理職にITリテラシーがなさ過ぎる」─ 。アンケートの自由記述欄には、DXの推進に当たってITリテラシーの必要性と、経営者・幹部のリーダーシップを求める声が目立った。特に興味深い回答について電子メールで追加取材。製造業の最前線に立つ経営者や設計者、生産技術者などの生の声を紹介する。
現場を動かす部長・課長クラスの知識不足と社内セクショナリズムが障害に
DX(デジタルトランスフォーメーション)導入の障害になっているものには大きく2つある。1つは管理職クラスのITリテラシー不足だ。
経営陣が「IoT(Internet of Things)やDX、インダストリー4.0に取り組め」と指示するのはよい。大きな方向性を示すのは経営陣の仕事だから。しかし、現場を動かす部長・課長クラスのITリテラシーが低いのは大問題だ。食わず嫌いもあって、ITが絡んでいるプロジェクトの話はまともに進まない。話が通じるのはせいぜい20~30代の若手のみ。それ以上の年代となると、ほとんど話がかみ合わない。
例えば、IoTに関わる設備などの導入に関して議論すると、まず出てくるのが「俺には良く分からないから」との声。その次が「分かる形に仕上げて説明しろ」。もっとひどい場合は、「話はいいから形にしろ」などと言う。
形にするのはいいが、そうすると今度は世の中にあるIoT機器を全て吟味するのを求められ、現実的ではない。世の中にあるさまざまなサービスやシステムから取捨選択して必要な部分に工数を掛けたいのに、その選択すら許されない。これがDXを難しくしている。
もう1つの障害は、社内のセクショナリズム、特に技術部門と情報システム(情シス)部門の仲の悪さだ。
技術部門には、ものを造って売り上げに貢献してきた自負があるが、現在はかつてに比べて軽んじられている。そのため、ITの重要度が増してから重んじられ始めた情シス部門をやっかんでいる。「情シスはベンダー任せでコードも書いていない。自分たち技術部門は実際にコードを書いて商品化している」という不満を持つ。
逆に情シスからみると、時代遅れの技術に固執して最新のデジタル技術を疎んじる技術部門が偉そうにしているのを許せない。「社内の情報インフラのセキュリティーリスクに対して融通が利かず、情シスの言うことを聞いてくれない」と映る。こうした部門間のあつれきは、全社を挙げて取り組むべきDXの妨げになっている。(産業用機器メーカー、設計)
各現場を理解しDXにも精通している人材の育成が必要
当社は、主にBtoBを中心する素材産業なので、世間が注目している「ビジネスモデル変革」を目的とする派手なDXは必要ない。地道に社内外の業務プロセスの効率化や生産性向上を進めながら、次のステップとして顧客接点の強化や顧客満足度を向上させる取り組みを実現していくのが、当社としてのDXの主な目的だ。
事業領域が多様なので、各現場で課題抽出や課題解決を進めるには、ビジネス感覚とドメイン知識を持ち、さらにDXにも精通しているという「両刀遣い」の人材の育成を図っていく必要があると考えている。(その他の製造業、その他)