

超個性派材料2020

目次
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9つの超個性派材料
材料開発は、長期的な取り組みができる日本の得意分野だ。毎月のように超個性的な材料の発表が続いている。水を強くはじく特性を追求した複合材や塩湖の水を通すだけでレアメタルを回収できるフィルム、プラスチックとゴムの特性を両方持つ高分子材料…。材料の構造や補強材(フィラー)の入れ方を、分子レベルで改良する…
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ハリセンボン型の超撥水塗料、結晶の隙間に空気巻き込む
事例1[超撥水]物質・材料研究機構
水が物体表面に対して、150度以上の接触角で接する状態を超撥水(はっすい)という。水滴を接触させた場合、直観的には水滴が球形を保ったまま物体の上に乗っているように見える状況になる。
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釘を刺しても穴が開かない、世界初のゴム╳プラスチック
事例2 [超柔軟]ブリヂストン
ブリヂストンが開発した新材料「SUSYM(サシム)」。その特徴は合成ゴムの成分とプラスチックの成分を分子レベルで結合させ、両者の特徴を併せ持たせたことだ。具体的には、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンと、プラスチックスのエチレンやプロピレンなどのオレフィンを共重合させる。同社は「両者を共重合さ…
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人肌温度で粘着するシート、軟化始まるガラス転移点は28℃
事例3 [超粘着]三井化学
三井化学が開発した「体温感知自己粘着性シート」は、高分子の一部の運動性が大きくなるガラス転移温度が約28℃と体温に近いポリオレフィン系プラスチック。人肌温度程度で温めると軟化し、その状態で圧力を加えて押し合わせると自己粘着性を示す。
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Liまで通す0.8nmの均一な孔、塩湖水などからの資源回収に活用
事例4 [超分離]東レ
低濃度の塩湖水からでも低コストでリチウム(Li)を回収できる─。Liイオン二次電池をはじめとして需要増加が見込まれるLiの生産効率化に貢献しそうな材料「超高透水性NF膜」を東レが開発した。
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ゴムなのに熱伝導性が高い、2種の炭素で通り道を造り込む
事例5 [超伝熱]産業技術総合研究所
合成ゴムや熱可塑性エラストマーの「良く伸び縮みする」という特性(ゴム特性)は、熱伝導性や磁性の高さといった機能性とは一般的にトレードオフの関係にある。ゴム特性を持つポリマー(以下、ゴム材料)に機能性を持たせるため無機材料の混ぜ物(フィラー)を加えた複合材料では、混ぜ物同士が凝集しやすく、ゴムの特性…
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両端ほどけたセルロースで強化、2段構えの亀裂抑止で衝撃に耐久
事例6 [超分岐]パナソニック
パナソニックはクリーナー(掃除機)やタンブラー(コップ)へ、セルロース繊維で強化したプラスチックの応用を始めている。セルロースナノファイバー(CNF)のようにnm級に細かくするのではなく、繊維の中心部の太さはμm級ながら両端がnm級に細かく枝分かれした形状にするのが特徴だ。元のプラスチックより強度…
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アルミの軽さで鋳鉄並みの強度、高速で動くリフロー治具で採用
事例7 [超制振]アドバンスコンポジット
アドバンスコンポジット(静岡県富士市)が開発した「AC-Albolon(アルボロン)」は、アルミニウム(Al)合金並みの軽さで鋳鉄と同等の強度を持つ材料だ。実体は、Al合金とセラミックスの複合材。鋳型の中にセラミックスの多孔質体を固定した状態で溶融したAl合金を流し込み、高圧をかけて含浸・凝固させ…
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高温で衝撃に耐え金属を代替、最強プラPEEKをナノカーボンで補強
事例8 [超耐熱]産業技術総合研究所、サンアロー
自動車の軽量化を図る上で、金属製部品のプラスチックへの置き換えは有力な手段。よく使われるのが比強度の高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)だ。
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異種材に結合しやすいPPの接着材、炭素繊維複合材の強度高める
事例9 [超結合]三栄興業
自動車のバンパーやコップなどの日用品、DVDのケースなど身近な製品で多用されている汎用プラスチックの1つポリプロピレン(PP)。比重が小さくて強度が高く、加工性も良いのだが、「接着性が低い」「塗装しにくい」という弱点がある。
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データ蓄積も発掘もAIで自動化、材料発見のスピード競争に不可欠
解説・マテリアルズインフォマティクスの動向
「熟練研究員よりも25倍速く発見できた」─。そう誇らしげに発表したのは、昭和電工、産業技術総合研究所(AIST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)。人工知能(AI)など先端の計算科学を材料開発に応用するマテリアルズインフォマティクス(MI)…