全4344文字
PR

 まだまだ技術的な発展の余地はあるだけに、3Dプリンターによる製造(アディティブ製造)は非常に大きな可能性を秘めた技術である。既存工法で造っていたモノの造り方を単に置き換えるだけでなく、アディティブ製造の特徴を最大限に生かした使い方を模索したい。設計を見直して形状を変えるのに加えて、従来の業務フローやビジネスモデルの革新にもつながるはずである。

試作プロセスも変わる

 これまで製造業の開発プロセスにおいて、アディティブ製造は主に試作品の作製手段として用いられてきた(図1)。「ラピッド・プロトタイピング」の延長線上にあるアディティブ製造は、試作品を素早く、安価に手に入れることができ、設計情報を実体化し、組み立てて形状を確認したり、実験で機能を確認したりする用途に向いている。

図1 アディティブ製造による試作プロセスの変化
図1 アディティブ製造による試作プロセスの変化
従来は、試作期間の短縮や低コスト化を目的にアディティブ製造を活用することが多かった。今後は、アディティブ製造がより手軽になるため、さらに上流工程におけるコミュニケーション・ツールとしての活用が広がる。(出所:ACSP)
[画像のクリックで拡大表示]

 アディティブ製造による立体モデル作製のコスト低減や時間短縮は着実に進んでいる。単に従来の試作品の作製手段を置き換えるという発想ではなく、試作の役割そのものの見直しが考えられる。それが、コミュニケーション・ツールとしての利用である。

 従来は、コストや期間を考えて「試作するほどではない」と躊躇(ちゅうちょ)していたようなケースでも、アディティブ製造なら試作しやすい。そのため1度に造れる試作品の数も、修正を加えて造り直す回数も格段に増える。

 こうして造られた試作品は、従来の試作のように設計がある程度完了した段階で形状や機能を確認するのではなく、設計を決める過程、つまり試行錯誤の段階で使えるようになる。モノをベースにした多くの人の議論によって理解が深まり、画面上の3Dモデルや図面では気が付かないようなことも指摘できる。

 ここで大切なのが、モノをベースにする以上、その場に関係者がいる必要があるという点である。グローバル化の進展によってITを駆使した遠隔地コミュニケーションの必要性が高まり、活用も進んでいるが、実物を目の前にしたコミュニケーションには及ばない。日本では地理的に近いところに多くのメーカーがひしめいているため、アディティブ製造を使えば、この状況を利点とした新しい開発プロセスが生み出せるはずである。

 この考え方は、成形・加工を請け負う町工場でも生かせる。顧客のアイデアをアディティブ製造で実体化できれば、顧客層を広げやすくなるとともに、誤解に基づく手戻りを減らし、結果として顧客満足度の向上につながる。