さまざまな商品・サービスがインターネットで買える時代となり、いまやカスタム部品の機械加工も例外ではない。そのためのサービスが、「受発注プラットフォーム」だ。3Dモデルや図面を登録すると、すぐに見積額を提示して加工を手配したり、加工してくれる工場を仲介(マッチング)してくれたりするサービスである。
ユーザー(発注企業)にとっては、ネットショッピング同様、総じて安価で納期が短く、発注手続きが簡単なのがメリット。例えば3D設計データから発注用図面を作成・印刷する手間が省ける。容易に技術力のある新規サプライヤーを開拓でき、調達リスクも回避しやすい。
一方、加工を引き受ける工場(受注企業)も、新規顧客の開拓が容易になる、受注が増えて事業が安定する、代金回収の手間やリスクが減り、資金繰りが安定するなどの恩恵がある。発注者と受注者が相互にメリットがあり、結果としてプラットフォーマーも利益を得る、いわゆる「エコシステム」型のビジネスである。
ボトルネックをDXで解決
「インターネットで機械加工が買える」のは、単にインターネット活用の話ではなく、実は製造業にやってきたデジタルトランスフォーメーション(DX)の大波の1つだ。受発注プラットフォームを利用すれば、発注用図面の発行や見積もり依頼に手間をかけずに部品加工を発注できる。発注者の調達リスクの回避、受注者の資金繰りの改善は、双方にとって事業継続計画上の強化にもつながる。
実は、部品加工を外注する調達業務は、設計と製造の間にある「DXの谷」だった(図)。「設計、製造、販売はIT化が進んでいるが、調達はいまだ紙図面や手作業ベース。ここがボトルネックになっている」(ミスミ)。そのためIT技術を駆使した受発注プラットフォームによって、機械加工部品の調達を効率化できるとの期待が高まっている。
インターネットショッピングが流通や小売りに変革をもたらしたように、受発注プラットフォームは、これまで大手企業を頂点とするピラミッド状だった部品加工のサプライチェーンを大きく変える可能性を秘めているのだ。