既存のエンジン車からの流用ではなく、当初から電気自動車(EV)への適用を前提として開発したプラットフォーム(PF)を採用する新世代のEV─。そうしたEVが欧州市場を中心に2021年にかけて続々と登場する。興味深いのは、そこには各社のEV戦略の違いが色濃く反映されていることだ。
新世代EVには各社の考え方が色濃く反映
新世代EVの最大の特徴は、既存のエンジン車のPFを流用して開発することが多かった従来型のEVと違い、EVはどうあるべきかを当初から考え、EVへの適用を前提として開発したPFを採用している点だ。
例えば、日産自動車の「アリア」(日本で21年中ごろ発売)、フランスGroupe PSA(グループPSA)の「プジョーe-208」(欧州で19年後半に発売)、「シトロエンe-C4」(欧州で20年夏に発売)、「DS 3 クロスバック E-TENSE」(欧州で19年秋発売)、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の「ID.3」(欧州で20年9月に一部モデルから納車開始)、ホンダの「Honda e」(欧州で20年夏、日本で20年10月発売)などがそれに当たる*1。いずれも、19年後半から21年末にかけて登場する新型EVであり、EVへの適用を念頭に開発したPFを採用している(図1)。
興味深いのは、PFの開発を通じてEVの在り方を深く検討したことが影響したためか、新世代のEVには、EVに対する自動車メーカー各社の考え方や戦略が色濃く反映されている点だ。例えば、エンジン車並みの総所有コスト(TCO)を重視して低価格化を追求するメーカー、これからのEVをリードする性能や装備、快適性を重視するメーカー、エンジン車とは別の競争軸でEVならではの魅力を追求するメーカーなどだ。VWのID.3やグループPSAのe-208などはTCO重視、日産のアリアは性能・装備・快適性重視、ホンダのHonda eは独自の競争軸重視の新世代EVといえる。
以下では、EVの魅力に磨きをかける日産とホンダの取り組みを見ていく。エンジン車に代わって選んでもらうためには、消費者を引き付ける魅力が不可欠。日産自動車は充実度、ホンダは独自性で市場に切り込む。