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1 若手離職の経緯

 今回は、工作機械を使って金属加工をしているE工場の例を紹介する。

 技術に定評があるE工場は多くの熟練作業者を抱えており、長い間、新しい社員を増やさず操業を続けていた。ところが、時間が経つにつれて社員の多くが60歳前後となり、最も若い人ですら40代といういびつな年齢構成になった。そのため、もっぱらベテラン社員が、日々顧客から寄せられる難しい要求に応える状況となっていた。

 いくら優れた工場でも高齢化にはあらがえない。日を追うごとに退職者が増える一方で、生産量は増大。人員の充足が急務となった。ただ、E工場は大きな機械音が鳴り響き、切削油の臭いが漂う、いわゆる昔ながらの現場である。今時の若者に好まれなかったのか、求人を出してもなかなか応募はない。しばらくして、ようやく意欲のある若者を採用できた。

 工場長は優秀なベテランを指導係に任命し、新人の教育に当たらせた。ところが数カ月後、採用したばかりのその新人が急に「辞める」と言い出したのである。工場長らは何度も慰留したが、その若者の意思は変わらなかった。急きょ再募集して別の新人を採用してみたものの、数カ月もたたないうちにまた辞意を切り出されてしまった()。

図 新入社員が定着しないE工場
図 新入社員が定着しないE工場
ベテラン社員による「見よう見まね」の指導に耐えられず、苦労して採用した新人が次々と会社を去った。 (イラスト:ヤミクモ)
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 一体、何が問題だったのか。工場長が指導係のベテランに問うと、「なぜもっとまともなやつを採用しないのか!」と、逆にかみ付かれてしまった。人材難とはいえ、採用で妥協したわけではない。それなのにベテランからは酷評の嵐である。このままだと次に採用した新人もまたすぐに辞めてしまう。工場長は危機感を覚えた。