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1 改革頓挫の経緯

 優れた技術を持ち、多くの顧客から信頼を得ている工場がある。これをG工場と呼ぼう。G工場は、幅広い産業の裾野を支える製品の加工を得意としている。その実力は、国内外の有力企業から「ぜひG工場でやってもらいたい」と指名を受けるほど。景気の良いときには休む間もなく操業していた。

 もちろん、景気には浮き沈みがある。ある時に不況に見舞われ、G工場の稼働も大きく落ち込んでしまった。しかし、優秀な現場はそんな時でも前向きだった。「今こそ時間的な余裕を生かして現場改革を進め、景気回復後に備えるべきだ」との声が上がったのである。

 特に熱心だったのは、長らく日々の改善を積み重ねてきた中堅社員たちである。稼働率の低下で生じた時間をむしろ好機と捉え、大がかりな改革を進めたいと考えた。もちろん、従来も工程単位の改善には取り組んでいたが、G工場ではネタが尽き始めて「頭打ち感」が否めなかった。しかし優秀な中堅社員たちは、生産全体の流れを見直す抜本的な工程改革のアイデアを温めていたのである。

 ところが、そうした中堅社員らの動きに対して、上司の管理者が予想外にも反対に回った。「そんなことよりもっと早く改善の成果が出る方法を探せ」─。こう上司から言われた中堅社員らは、頭ごなしに否定されたと感じて、見事にやる気を失ってしまった。こうして、G工場では、せっかく持ち上がった改革の機運が下火になり、重箱の隅をつつくような改善活動を繰り返す日常に戻ってしまった()。

図 改革の機運が削がれた工場
図 改革の機運が削がれた工場
目先の成果にこだわる管理者が中堅社員の改革案に反対した。(イラスト:ヤミクモ)
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