三菱総合研究所(以下、三菱総研)とグループ企業のエム・アール・アイリサーチアソシエイツ(東京・千代田)は、人工知能(AI)と解析計算(CAE)を組み合わせた製品仕様の策定支援システム「CAE4CTO」を開発中だ。従来、産業用設備機器の受注生産では、仕様策定(基本設計)に数カ月を要していた。これを10分程度と大幅に短縮する。
産業用設備機器メーカーは、顧客による要求仕様(要件定義)を待って設計・生産する受注設計生産(ETO:Engineer to Order)方式を採らざるを得ないケースが多い。これを受注仕様生産(CTO:Configure to Order)方式に転換する。メーカーが顧客に複数の基本設計案を提示し、顧客がその中から決めるスタイルだ。AIとCAEの組み合わせで提案のプロセスを圧縮。提案力の強化と効率向上の両立を目指す。
AIで多様な製品構成を生成、CAEで検証
三菱総研グループはもともと、ルールベースのエキスパートシステムによって実現したAIコンフィギュレーターを提供した実績を持つ。ユニット同士の組み合わせルールから、製品として成立する構成を自動的に生成できる。こうして生成した多様な製品構成についてCAEによる解析計算を実行し、その結果をAIコンフィギュレーターにフィードバックしておくのが基本のアイデアだ(図1)。
事前にCAEが計算していた結果により、特定の性能を得やすい構成や、コストを抑えられるユニットの組み合わせなどの情報をAIコンフィギュレーターに織り込める。顧客との商談時には、打ち合わせを通して要件定義の項目の優先順位やバランスを微妙に変えた複数案を生成していける。どの案も、納期とコストは事前のCAE計算で担保している。決定した仕様に対しては詳細に設計検討を加えていくが、事前に概要設計を最適化しているため、納期やコストが大きくブレることはない。
従来のように、基本設計に数週間から数カ月を要していると、複数の案を比較検討するのは難しい。顧客は要件定義を1つに決め打ちせざるを得なかった。新システムの利用で、顧客は複数の要件定義を比較検討できるようになり、メーカーは顧客に対してコンサルティングという付加価値も提供できるようになる。
この取り組みを可能にしたのはパソコン(PC)の性能向上だ。計算の所要時間が短くなり、数多くの構成1つひとつに対して現実的な時間で特性や性能を検証できるようになった。