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製造業でDXを進める現場で集めたよくある困りごとをITベンダーに相談して解決策を提案してもらった。

課題監修:本間峰一(生産革新フォーラム代表幹事、株式会社ほんま・経営コンサルタント)
回答者:日鉄ソリューションズ執行役員DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター所長斎藤聡氏、富士通COLMINA事業本部戦略事業統括部、富士通EBAS事業本部第二ソリューション事業部、富士通EBAS事業本部戦略企画統括部

Task01| 発注量の変動が大きすぎる
[課題] 当社と、当社が部品を納める取引先は「需要に対して生産を完全に同期させるべき」と考え、無駄をなくそうと しています。しかし、現実には需要の変動が大きすぎて、生産の完全同期が難しいです。

[対策] 在庫を持ってもよい。なるべく減らすために有用な情報を当事者間で共有する。

 変種変量生産は重要であり、顧客が注文したものだけをすぐに造れれば無駄は出ないはずだが、あまりに変動が大きいと設備や人員の空きという無駄が生じてしまう。現実には在庫をゼロにするのも、顧客からの注文にタイムラグなしで提供するのも無理である。

 企業間や部署間での情報連携を速くしたり、別の情報を組み合わせたりすると在庫量削減に役立つのであれば、情報の受け渡しの仕組みを工夫すべきだ。その際、変動のブレが大きいものと小さいものに分けて、大きいものに対して重点的に対応するのがよい。

 「B to B to C」、すなわち「サプライヤー→製品メーカー→顧客である消費者」というつながりがある場合は、顧客の需要変動が大きいと、それに連動して製品メーカーの生産量の変動も大きくなる()。結果としてサプライヤーへの発注量の変動も大きくなり、増幅する場合もある。製品メーカーの需要予測の精度を高める、これまでよりも長期的に需要の傾向を見るなどの工夫で、変動を緩和できる可能性がある。製品メーカー自体が苦慮している可能性もあるので、「そちらも困っていませんか、大変さを減らすような仕組みを検討しませんか」と協議を申し入れる方策が考えられる。

(日鉄ソリューションズの資料を基に日経ものづくりが作成)
(日鉄ソリューションズの資料を基に日経ものづくりが作成)
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Task02| 顧客の注文票が手書きのFAX
[課題]顧客(中小企業)からの注文はFAX(手書き伝票)で送られてきます。社内のIT化を推進したいと思っていますが、FAXの入力がネックとなっています。

[対策]まずは「なぜFAXを利用しているのか」確認すべきだ。

 先方に電子化を依頼したいところ。しかし、「なぜFAXなのか、手書きなのか理由があるはず。それをまず確認する必要がある」(日鉄ソリューションズ)。先方では基幹システムからデータを抜き出すのが難しく、担当者が端末で伝票の情報を見て手で転記するしかない、といった事情があるかもしれないからだ。

(Kana Design Image/PIXTA)
(Kana Design Image/PIXTA)

 その事業が動かしがたいものである場合は、視点を変えてFAXの受け取り側で対応する方法もある。OCR(光学文字認識)や画像認識、RPA(Robotic Process Automation)による自動化などでデータ化する。OCRで読み取りやすいように、チェックボックスを多用したフォーマットを送信文書に使ってもらうようにする、といった方法もある。

 業界全体で手書き伝票が課題である場合は、サプライヤー数社が共同で受発注プラットフォームシステムを立ち上げ、各サプライヤーに対してサービスの形で提供する方法もあり得る。