精密な加工ニーズがリプレースの意欲に
国内外で工作機械のリプレースのマグマ(要望)が相当たまってきています。(先進国を中心とする)世界各国が温暖化ガスの厳しい削減目標に取り組む中、精密な加工部品の需要がより高まるとみています。
例えば、船舶などでも全ての内燃機関を急に電動機(モーター)へと置き換えるのは難しいし、現実的ではありません。メーカー各社は厳しい規制や目標に対応する新技術や、そこまでのつなぎとなる技術を開発しています。いずれもこれまで以上に精密な部品が必要になります。古い工作機械を使い続けていては、規制や削減目標から生じる市場ニーズに確実に対応できなくなる。メーカー各社はそういった危機感を持っているのです。
当社工場でも最近、古い工作機械を一斉に最新の同時5軸機に置き換えました。従来5台でこなしていた工程が2台で済むようになるなど、工程集約が進み機械の台数が減りました。
その結果、工場のフロアが合計で2万坪(3万3000m2)ぐらい空くなど、大幅に省スペース化できました。「これから飛行機でも造るのか」と言われてしまいそうな途方もない広さです。この空いたスペースを新工場にしようと改装中です。お披露目は21年8月ごろになる予定です。
コロナ禍でサポートポータル契約が急増
コロナ禍を経て、顧客との関係も大きく変化してきています。その1つが、サポートのためのポータルサービス「my DMG MORI」の利用者急増です。多くの顧客とデジタルでつながれるようになりました。1年前(19年12月)はグローバルで5000ユーザー程度だった契約数が、20年末には国内で1万、グローバルで4万ユーザーほどになっています。
これまでは、「製造現場は三現主義」との意見が多かった。セキュリティー上の懸念なども挙げてデジタル化を否定する意見を頂くこともままありました。これがコロナ禍で一気に変わった。「背に腹は代えられない」とばかりにデジタル化へ強い関心を持ち、とても多くの顧客がポータルサービスに登録してくれました。
顧客は、my DMG MORIを介して、過去のサービスの履歴や技術ドキュメントなどを全て確認できます。今後のサービスの充実に向けて、現行の電話やSNSによるサポートに加えて、AI(人工知能)のチャットボット*によるサポート業務の実験も開始したところです。
あらかじめ定めたルールや人工知能などを利用して、人に代わってコンピューターが返答する対話プログラム。
今後5G(第5世代移動通信システム)が製造現場に導入されれば、工作機械からアラートを吸い上げて、そこからPPR(プロダクト・プロブレム・リポート)を自動で出力し、過去の対応履歴から対策や修理方法を提示する、といった対応も実現できるとみています。今でもベテランサービスマンたちは顧客が抱えるトラブルの7割くらいを電話越しで解決してしまうんですから、彼らの知見を埋め込めれば、そういう領域は将来ITシステムに置き換えて自動化できるはずだと考えています。