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国内では最大、世界的にも最大級の工作機械展示会である「日本国際工作機械見本市」(JIMTOF)。2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染対策などの影響を受け、オンラインで開催された。世界9カ国・地域から394社(国内370社、海外24社)が出展した「JIMTOF 2020 Online」(以下、JIMTOFオンライン)で披露された主な新製品を紹介し、最新製品・サービスの動向を追う。

【ヤマザキマザック】
最新NC装置搭載機で
クラウドサービスを標準化

 ヤマザキマザックは最新NC装置を搭載する新製品(20年12月以降販売分)を対象に、同社のオンラインサービスである「Mazak(マザック)iCONNECT(アイコネクト)」(以下、iCONNECT)を標準的に利用できるようにした。iCONNECTは、顧客と顧客が購入した工作機械、ヤマザキマザックのサポートセンターをネットワークでつないで、各種サポートを提供するサービスで、19年4月に開始している。20年12月以降に販売する新型NC装置の搭載機には、従来は有償だった専用通信機器を標準装備し、iCONNECTのオンラインサービス機能を標準化する

* NC装置「MAZATROL SmoothAi」を搭載する製品では、購入後3年間は無料でオンラインサービスを利用できるようにする。

 iCONNECTを利用すれば、購入製品の使用ソフトウエアなどを常に最新バージョンに更新でき、各種の機能拡張も可能。携帯電話回線を使用するので複雑な配線作業は不要。IoT(Internet of Things)を活用した稼働監視や保守管理などのサービスも受けられる。

AIでびびり振動を抑制、加工誤差を自動補正
5軸マシニングセンター
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 テーブルに積載できるワークの最大サイズをφ1000mm×415mmまで拡大。治具に複数のワークを固定して連続加工するなど柔軟に運用できる。自社製の新型ボールねじを採用し、主軸のX・Y・Z 軸の送り速度を48m/分に向上して加工サイクルを短縮した。

 NC 装置「MAZATROL SmoothAi」を標準搭載。人工知能(AI) による適応制御で加工条件を自動変更し、「びびり振動」を抑制して、なめらかな加工面を実現する。ワークの計測データ履歴を AI が深層学習して加工誤差の発生要因をパターン化。加工誤差を自動で補正して加工精度を向上できる。

加工領域
加工領域
(出所:ヤマザキマザック)
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    主な仕様
  • 最大積載ワーク寸法:φ1000mm×415mm
  • 主軸移動量:750mm(X軸)、890mm(Y軸)、600mm(Z軸)、-120度~+30度(A軸)、±360度(C軸)
  • 価格:5180万円(税別)~
ビルトインモーター式主軸で安定加工
NC旋盤
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 中小型部品加工向けのNC旋盤。ベルトやギアなどの振動源がないビルトインモーター式主軸を採用しており、主軸の高回転域でも加工品位が安定する。機械サイズをコンパクトにし、切りくず搬出装置を背面に設置したので複数の機械を横に並べ、ワークコンベヤーやロボットハンドなどを連結した省スペースな自動化システムを構築しやすい。

 NC 装置は対話型の「MAZATROL SmoothEz」と、Gコードでプログラミングできる「MAZAK FZ」の2種類から選択できる。

一般的なベルト駆動モーターとビルトインモーター
一般的なベルト駆動モーターとビルトインモーター
一般的なベルト駆動モーター(左)では、ベルトの伝動に使われるプーリの周速が速くなるほど振動が増大する。QTEシリーズが採用したビルトインモーターには、ベルトやギアなどの振動源がない。 (出所:ヤマザキマザック)
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    主な仕様
  • 最大加工径:φ350mm (8角刃物台)/φ290mm(12角刃物台)
  • 最大加工長さ:299mm(100 SG)~520mm(200 SG 500U)
  • 主軸移動量:195mm(X 軸)、325mm(Z 軸、100 SG、200 SG 300U)、520mm(Z 軸、200 SG 500U)
  • 主軸最大回転速度:5000rpm
  • 価格:QTE-100 SG 735万円(税別)~、QTE-200 SG 795万円(同)~
新開発の主軸で出力を向上
横形マシニングセンター
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 最大回転速度1万rpmの標準主軸で出力45kW(最大トルク350N・m)と、従来機に比べて23%向上させて切削能力を高めた。標準43本の自動工具交換装置にドラム式マガジンを採用して、次工具への交換の待ち時間を短縮。搭載できる最大工具長を690mmまで延長した。

 オプションのDDM(ダイレクト・ドライブ・モーター)テーブルを採用すれば、ギアやカムなど動力を伝達する機構がなく、モーターの回転がテーブルに直結するので、動力を損失せずに高速かつ高精度に位置決めできる。

 熱変異制御機能も新たに搭載。ワークの計測データ履歴をAIが学習し、加工誤差の発生要因をパターン化して加工誤差を自動補正するので精度を安定させられる。


    主な仕様
  • パレットサイズ:630mm×630mm
  • パレットの最大積載質量:1500kg
  • 最大加工寸法:φ1050mm×1300mm
  • 軸移動量:1050mm(X軸)、900mm(Y軸)、980mm(Z軸)、±360°〔B軸(テーブル旋回)〕
  • 主軸最大回転速度:1万rpm(標準主軸)
  • 主軸出力:45kW(標準主軸)
  • 価格:5250万円(税別)~
デジタルツイン機能で作業の効率化を図る

 AI機能を持つNC装置の搭載機は、同社が開発したCAMソフト「Smooth CAM Ai」をオプションで搭載すれば、NC装置と連携させてデジタルツイン機能を利用できる。Smooth CAM Aiをインストールしたパソコン上に、仮想の3Dモデルを構築。仮想マシン上で干渉チェックや加工時間の予測を行い、切削時の主軸負荷や切りくず排出量をシミュレーションする。

 その上で加工プログラムや検証済みのシミュレーションデータを実機に転送。実機で加工条件を調整して、加工工程の改善に役立てられる。また、実際の加工で得た切削負荷の実績値や変更した切削条件などの変更点をSmooth CAM Aiにフィードバックして、次のシミュレーションに反映できる。

デジタルツイン機能による3Dモデル(左)と実機(右)
デジタルツイン機能による3Dモデル(左)と実機(右)
(出所:ヤマザキマザック)
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