20年間にわたって使い続けられるロケット─。H3プロジェクトマネージャを務める岡田匡史氏は、H3ロケットのコンセプトについてこう語る。目指す姿は「究極の使い捨てロケット」だ。2021年度内の試験機1号機打ち上げに向けて開発は大詰めを迎えつつある。車載向け電子部品の採用やアディティブ製造の適用といった低コスト化に向けた取り組みなど、現状と今後の展望を聞いた。(聞き手は松浦晋也=科学技術ジャーナリスト、高市清治、中山力)
日本の宇宙輸送システムとして、H3ロケットをどのように位置付けていますか。
岡田氏 日本でこれまで積み上げてきたロケット技術の集大成と考えています。目指しているのは「究極の使い捨てロケット」。米国では打ち上げたロケットの一部を回収し、再利用する動きもあります。しかしH3は、機体の製造、打ち上げ時の準備や点検などの無駄を削ぎ落とし、ビジネスとして十分成立する筋肉質のロケットとして磨き上げています。今後20年間にわたって競争力を持つロケットにしていきます。
そのために打ち上げ費や設備維持費などコストを削減しました。積み上げた技術を駆使してさまざまなコスト削減を図る。これによって将来への投資を続け、日本のロケット産業基盤を維持・発展させます(図)。