2020年11月、家庭用ゲーム機をリードする大手2社がそれぞれ次世代のフラグシップ機を発売した。米Sony Interactive Entertainment(SIE)の「PlayStation 5」(以下、PS5)と、米Microsoftの「Xbox Series X」(以下、Series X)である(図1)。
PS5は7年ぶり、Series Xは3年ぶりのモデルチェンジとなる。PS5とSeries Xを分解調査して、両者の設計の狙いや考え方を分析した。
コスト削減か小型化優先か
両製品はゲーム機としての基本スペックは驚くほど似通っている(表1)。3GHz代後半の周波数で動作する米AMD製の8コアCPUと、演算性能10TFLOPS以上のGPUを組み込んだメインプロセッサー(SoC)を搭載。リアルタイムレイトレーシングに対応した8Kのゲーム映像を取り扱うといったスペックは両者同じ。
製品名 | PlayStation 5 | Xbox Series X | |
メインプロセッサー(SoC) | CPU | AMD製「Zen2」アーキテクチャーを基にした8コア品。動作周波数はSMT利用時で3.5GHz | AMD製「Zen2」アーキテクチャーを基にした8コア品。動作周波数はSMT利用時で3.66GHz |
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GPU | AMD製「RDNA2」アーキテクチャーを基にしたカスタム品。CU数は36基。動作周波数は最大2.23GHz。演算性能は10.3TFLOPS | AMD製「RDNA2」アーキテクチャーを基にしたカスタム品。CU数は52基。動作周波数は最大1.825GHz。演算性能は12TFLOPS | |
ダイサイズ | 不明 | 360.45mm2 | |
製造プロセス | 7nm(本誌推測) | 7nm Enhanced | |
システムメモリー | GDDR6の16Gバイト品 | GDDR6の15Gバイト品、バスサイズは320ビット | |
メモリー帯域幅 | 448Gバイト/秒 | 560Gバイト/秒(10Gバイト分)、336Gバイト/秒(6Gバイト分) | |
内部ストレージ | 825GバイトのSSD | 1TバイトのSSD | |
ストレージのデータ転送速度 | 読み込み速度は非圧縮時で5.5Gバイト/秒、 圧縮時で8~9Gバイト/秒 | 非圧縮時で2.4Gバイト/秒、圧縮時で4.8Gバイト/秒 | |
拡張性 | 「M.2」仕様の拡張SSD、外付けHDD/SSD | 1Tバイトのカード型拡張SSD、USB 3.2を通じた外付けHDD | |
光ディスク(ゲーム媒体) | 4K対応の「Ultra HD Blu-ray」 | 4K対応の「Ultra HD Blu-ray」 | |
8K映像 | 対応 | 対応 | |
レイトレーシング | 対応 | 対応 |
大きく違うのは筐体のサイズとデザインだ。ここに両社の設計思想の違いが現れてくる。結論から先に書くと、PS5はコストや生産性を優先してサイズの拡大を許容したように見える。一方のSeries Xは、小型化やデザイン性を優先して、コストの増加を許したようだ。
サイズを比較すると、PS5は104×260×390mm(約10.5L)と、前機種の「PS4 Pro」よりも一回り大きくなった。それに対して、Series Xは151×151×301mm(約6.8L)で、PS5に比べると約35%小さく抑えている。Series Xは、比較的小さいPS4などの競合製品を意識して、小型化を重視したとみられる。
コストはどうだろうか。PS5の原価は「販売価格499米ドルと同等程度ではないか」(電子部品に詳しい技術者)と推測する。加えて、使用するネジの種類を絞ったり、部品点数を必要な数量にとどめたりなど、無駄を減らして生産不良を少なくする設計を取り入れることで、コストを抑えているとみられる。
一方のSeries Xは、部品の推定原価を足し算しただけでも「ゆうに500米ドルを超えるだろう。組み立てコストを合わせたら600米ドルに迫るのではないか」と、前出の技術者は話す。Series Xの売価はPS5と同じく499米ドルだ。