未曽有の事態となった2011年3月11日の東京電力福島第1原子力発電所の事故。あの日から10年を迎えたいま、粛々と廃炉作業が進められている。誰も経験のない極限環境での作業はどのように行われているのか。今後30年ほどかかるとされる作業を支える「廃炉メカ」技術の今を探った。

10年目の廃炉メカ
目次
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事故から10年目の福島第1原発、いよいよ燃料デブリ取り出しへ
Part1 総論
2021年3月は東日本大震災から10年の節目となる。2011年3月、大地震の後に発生した津波が東京電力ホールディングス(HD)の福島第1原子力発電所(福島県大熊町・双葉町)を襲った。原子炉は冷却機能を失い、1・3・4号機で水素爆発が生じ、さらに1・2・3号機が炉心溶融に至るという、未曽有の原子力災…
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方向を常に見直し、新たな技術を開発していく
Part1 インタビュー 小野 明氏 福島第一廃炉推進カンパニー プレジデント(東京電力ホールディングス常務執行役)
10年を経過した福島第1原子力発電所の廃炉プロジェクト。その技術的な意味について、廃炉の総責任者である福島第一廃炉推進カンパニーの小野明氏にノンフィクション作家の山根一眞氏が聞いた。
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全長22mのロボットアーム、目指すは燃料デブリ1gの取り出し
Part2 廃炉を支える技術 三菱重工業
炉心溶融に至った1・2・3号機の廃炉にとって、大きな関所となるのが燃料デブリの取り出しである。燃料デブリとは、ウラン燃料そのものと、燃料を覆う金属の被覆管などが溶けた後に冷え、再び固まったもの。圧力容器の底部や格納容器の底部に溶け落ちているとされる。廃炉を実現するには、この燃料デブリを取り出して輸…
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ラッチ機構で確実にハンドルつかむ、使用済み燃料の取り出し治具
Part2 廃炉を支える技術 東芝エネルギーシステムズ
天井にかまぼこのようなドーム屋根が乗っている福島第1原発3号機の原子炉建屋では、現在、使用済み燃料プールからの燃料集合体の取り出し作業が粛々と進められている。他の原子炉建屋にはない、ちょっと風変わりな外観のドーム屋根は、その作業のために建てられた。使用済み燃料プールで水に浸かっている燃料集合体を取…
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海外製遠隔ロボ4台で残置物撤去、電動とディーゼル駆動を使い分け
Part2 廃炉を支える技術 東京電力ホールディングス
2号機の使用済み燃料プールには、615体の燃料集合体が残されている。2024~26年度の取り出し開始に向けて、準備が進んでいるところだ。計画では、2号機原子炉建屋(以下、建屋)南側の壁に開口を設け、「オペレーティングフロア」に使用済み燃料を取り出す「燃料取扱設備」を入れる。
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120m排気筒を遠隔操作で解体、山根一眞が見た地元企業の闘い
Part3 特別寄稿
新型コロナウイルス感染症が広がり始め、日本中が緊張状態に陥っていた2020年5月1日。うれしい知らせがあった。福島第1原子力発電所〔1F(イチエフ)〕で進んでいた1・2号機排気筒(高さ120m)の最頂部から高さ59mまでの解体撤去工事が終わり、午後1時7分、排気筒の上部に「蓋」をしたのだ。
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全電源を喪失し炉心溶融へ、重なった想定外の連鎖
Part4 事故を振り返る
未曽有の原子力災害となった福島第1原子力発電所の事故。想定を超えた巨大地震と津波が襲ったとはいえ、なぜ炉心溶融(メルトダウン)にまで至ってしまったのか。事故の経緯をあらためて振り返る。