品質問題が頻発し、革新的な製品を生み出せない背景には、技術者の基礎力低下があるのではないか。そう危惧する技術者が増えている。その実態をアンケート調査などで明らかにするとともに、思いのほか知られていなかったり、その本質を正しく理解されてなかったりする重要キーワードを選び出し、解説する。

品質問題が頻発し、革新的な製品を生み出せない背景には、技術者の基礎力低下があるのではないか。そう危惧する技術者が増えている。その実態をアンケート調査などで明らかにするとともに、思いのほか知られていなかったり、その本質を正しく理解されてなかったりする重要キーワードを選び出し、解説する。
Part1 総論
ものづくりに関する技術者の基礎的なスキルや知識の低下は、危機的なレベルになっている─。そう考える技術者が多いことが、日経ものづくりの実施したアンケートで明らかになった。「かなり危機的な状況」「やや危機的な状況」を合わせると85.1%にもなった。
Part1
「『日経ものづくりNEWS』読者アンケート」に集まった自由回答の一部を掲載している。
Part2 ポンチ絵
多くのベテラン設計者は、「3D-CADの操作に入る前に、その辺にある紙の裏などにポンチ絵を描いている」と話す。CADIC(京都府大山崎町)代表取締役で設計コンサルタントの筒井真作氏もその1人。「3D-CADが普及する前は、(製図板で製図に取り掛かる前に)『定規を使わずに手で描け』とよく言われた」(…
Part2 デザインレビュー
デザインレビューとは、設計の技術的な根拠を明確にし、設計において要求された項目を満たしているかどうかを評価・確認するための手法。製品の品質を造り込み、品質不具合の発生を防ぐ品質管理手法の1つ日本語では、「設計審査」。
Part2 モジュラーデザイン
モジュラーデザインとは、おおざっぱに言うと設計標準化を大幅に拡張した概念と言える。「レゴブロック」のように既製部品をあらかじめ準備しておき、それらを組み合わせて様々な新製品を生み出す手法である。少ない共通部品で多くの新製品を短時間のうちに生み出せるため、納期短縮とコスト削減につながる。
Part2 生産管理システム
生産管理システムを刷新したら、かえって納期が守れなくなったメーカーがある。A社は、工場の稼働状況を見ながら納期を見積もりたいと考えた。この場合、生産管理システムには品目、製造プロセス、工程のデータに加え、機械や作業者などの生産資源の数、工程ごとの作業所要時間と段取り時間などが必要になる。
Part2 受注生産と計画生産
工場の生産活動は、生産指示(オーダー)が設定された時点で開始される。生産指示は取引先からの注文が入った時に設定するケースと、計画作成部門が作った生産計画に従って設定するケースがある。前者の生産形態を「受注生産」、後者の生産形態を「計画生産」という。
Part2 安全在庫
安全在庫とは、発注品の納入が遅れたり、予定外の出荷が生じたりしたときのための予備の在庫である。在庫の消費が計画通りであれば使われない。JIS(日本産業規格)では、次のように定義している。
Part2 パレート図
製造業において、品質を一定に保つための科学的な管理を品質管理(Quality Control、QC)という。QCに取り組む際に、品質に関わるさまざまなデータの把握・分析を容易にして、改善活動を進めやすくする「QC七つ道具(QC7つ道具)」と呼ばれる手法がある。パレート図は、このQC7つ道具の1つで…
Part2 強度と剛性
「強度」と「剛性」。ともに部品や構成材料の強さを表す用語のせいかベテランでも意味を混同している技術者を見かける。明確に異なった意味を持つこの2つの意味を正しく理解するために、まず材料に力を加えたときにどんな変化が起こるのかを、ばねを例に説明する。
Part2 焼入れ・焼戻し
熱処理に詳しくなくても、焼入れ・焼戻しという言葉に聞き覚えのある人はいるだろう。日本刀の製作風景を思い出して欲しい。赤く熱した日本刀を、水の中に差し込んで一気に冷やす。この工程がまさに、焼入れ・焼戻しにあたる。
Part2 工程能力指数
製造工程の能力は、造ったもののバラつき(工程変動)の大きさで表現できる。バラつきが大きい生産現場に比べると、小さくしかバラつかない生産現場は不良品が出にくく、能力が高いといえる。しかしバラつきが小さいつもりでいても、許容されるバラつきの幅がもっと狭かったら不良品ばかりになるので、その現場の工程能力…
Part3 数字で見る現場
「技術者からものづくりの基礎となる技術や知識が失われている」─。日経ものづくりが2021年2〜3月に実施したアンケート調査で、回答者の90%以上がこう答えた。「技術の標準化」や「流用設計の多用」の弊害と見る向きが多い。これらは納期短縮や品質向上に必要な取り組みだが、調査結果からは技術者の成長機会を…