ポンチ絵
【ぽんち-え】設計の構想を示す手描きの概略図・計画図。組立図や部品図を製図したり3D-CADでモデリングしたりする前、設計検討の際に作成する。
多くのベテラン設計者は、「3D-CADの操作に入る前に、その辺にある紙の裏などにポンチ絵を描いている」と話す。CADIC(京都府大山崎町)代表取締役で設計コンサルタントの筒井真作氏もその1人。「3D-CADが普及する前は、(製図板で製図に取り掛かる前に)『定規を使わずに手で描け』とよく言われた」(筒井氏)という。
同氏によればCADや製図は清書であり、清書は既に確定した内容をきれいに表現する行為だから、その前に製品をどのような構造や形状で実現するかを確定させる必要がある。その設計内容の実質的確定の過程で描くのがポンチ絵である(図1)。
しかし現在、ポンチ絵を描かない若手技術者が増えつつあるという。筒井氏が機械系の学生103人を対象に、教員の協力の下2021年3月前半に実施した調査では、「ポンチ絵」について「言葉を聞いたことがない」または「聞いたことはあるが、意味を知らない」との回答が59人(57.3%)に達した(図2)。
この結果に対して「半数も知らないとは驚いた」とベテランからの反応があったという。日経ものづくりがニュースメール配信「日経ものづくりNEWS」の読者を対象に実施した別の調査(Part3「数字で見る現場」参照)で「相手に通じなくて驚いたキーワードは?」と聞いたところ、選択肢方式ではなく自由回答文方式だったにもかかわらず、回答欄に記入した141人中「ポンチ絵」を含む回答は5人(複数の回答者が同一の用語を回答した例として最多)だった。さらに「フリーハンドで作図ができない」との回答も1件あった。
製品設計の出発点は「製品の使い手が何を要求しているか」「使い手に何を提供したいか」。これを数値などの定量的表現などで構成する要件に落とし、さらにその実現手段を検討して構造や部品形状を決め、設計図を作成する。ポンチ絵はこの過程の中で、実現手段や構造の検討過程と検討結果の表現のため、手で描く。自分の考えをまとめたり、同僚に検討中の考えを伝えたりするのに使う(図3)。