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適用は部分的でもいい

 MDが目指すのは、エンジニアリング・チェーン全体を考慮した標準化だ(図3)。しかし、企画から設計、生産、調達まで関連部署が多いため、実現には苦労を伴うだろう。実際、筆者は「部門横断的な活動が必要でMDの導入がうまくいかない」との声をよく聞く。だが、過度な心配は要らない。エンジニアリング・チェーン全体の見直しは、あくまで、MDが目指す理想だからだ。

図3 モジュラーデザインの影響範囲
図3 モジュラーデザインの影響範囲
製品開発における、物や情報の流れを示している。モジュラーデザインの導入は、エンジニアリング・チェーン全体の見直しにつながる。〔日野三十四著『実践 モジュラーデザイン』(日経BP)を基に筆者作成〕
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 まずは自社の製品や目的に応じて、部分的にでもMDの適用を検討してみてはどうだろうか。自社の業務にその「エッセンス」を部分的に取り込むだけでも、収益や生産性を改善できる可能性がある。以下は、著者が作成したMDの適用度(1~4)に応じた学習法である。

■モジュラーデザイン(MD)適用度別学習法■
  1. MDを適用している:
    【学習法】そのMD活動に参加する
  2. MDを適用していない:
    【学習法】マスカスタマイゼーションの要求があれば、その実現手法を検討する場を社内に設けて効果を試算する
  3. 設計標準化に取り組んでいる:
    【学習法】設計標準化・技術標準化の考え方を知り、その手順がうまく機能するように検討の場を社内に設ける
  4. 部品標準化に取り組んでいる:
    【学習法】部品標準化の考え方を知り、部品のモジュール化を検討する場を社内に設ける

 自動車業界の一部で試行錯誤が始まっているとはいえ、欧米企業に比べると日本企業におけるMDの適用事例はまだ少ないのが現状だ。しかし、製造業において、将来的に標準化への要求は大きくなっても小さくなることはないだろう。MDの推進によって部品標準化が進めば、資源の節約にもつながってくる。MDは製造業の様々な課題を解決する助けになるはずだ。

参考文献
1)ECM/MD研究会, 『標準化とモジュラーデザイン』, (http://www.j-ecm-md-institute.jp/column/20200831.html), 2021年3月17日.