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生産管理システム

【せいさんかんり-しすてむ】生産に伴う現品、情報、原価(価値)の流れを統合的かつ総合的に管理して、「生産管理」を系統的に実行するシステム。生産管理は、人・物・カネ・情報に基づき需要予測、生産計画立案、生産を実行する手続きと活動をいう。

 生産管理システムを刷新したら、かえって納期が守れなくなったメーカーがある。

 A社は、工場の稼働状況を見ながら納期を見積もりたいと考えた。この場合、生産管理システムには品目、製造プロセス、工程のデータに加え、機械や作業者などの生産資源の数、工程ごとの作業所要時間と段取り時間などが必要になる。

 ところが社内での導入目的の意識合わせが不十分で現場の協力が得られず、工程ごとの作業所要時間をシステム部門とシステム会社が設定した。両者とも現場の実態に精通していないため、設定した作業所要時間に余裕を見込みすぎた。システムが見積もってくる納期は現実よりもはるかに遅い期日になり、誰もその結果を利用しなかった。

 工場の班長は各自表計算ソフト「Excel」で担当工程の計画を立てるようにした。しかし、工程ごとの管理では仕掛品の着手順などの調整がうまくいかず、納期遅れが頻発するようになってしまった。

導入目的が高度化

 生産管理システムを導入する目的は、実績の見える化、納期見積もり、生産リードタイム短縮、同期化、平準化、在庫適正化、生産指示や調達の効率化など企業によってさまざま。これまでは、生産の指示や実績の見える化だけで生産管理システムを利用してきた企業が多い。しかし、生産管理の仕事は本来、計画から始まるものであり、最近は計画段階からシステムの活用を図る動きがみられる(図1)。

図1 生産管理システムを取り巻く背景
図1 生産管理システムを取り巻く背景
扱うべきデータが複雑化する方向にある。(出所:安保秀雄)
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 導入目的に応じて、整備すべきデータは変わる。例えば、実績の見える化が目的なら、製品や部品などの品目、それらの製造プロセスと工程を生産管理システムに登録し、実績を必要なタイミングで入力すればよい*1。これに対し、納期を見積もりたい場合は、A社のように工程ごとの作業時間と段取り時間などのデータまで必要になる。

*1 製品・部品の品目情報は通常、製品単位で構成部品の情報を集約したBOM(Bill of Materials、部品表)として整理、設定する。

 同じ工程でも製品仕様や作業者・設備ごとに作業時間が異なるなら、そのデータも必要だ。この他、ロット数や歩留まりなども設定する場合がある。これらの情報は「情物一致(情報と現場の物が一致すること)」となるように設定する必要があり、そのためには現場を熟知している担当者がデータ整備に関わらなければならない。