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 現在、国内外の電力供給インフラは交流が主流だが、再生可能エネルギー(再エネ)の広がりによって直流送電に注目が集まっている*1。これまで直流送電の用途は限定的だったが、半導体技術の進化と相まって長距離送電が可能になり、再エネを系統連系*2する重要な手段となりつつある。それが、大容量の電力を高圧直流で送電する「HVDC(High Voltage Direct Current;高圧直流送電)」だ。

*1 実は世界初の電力供給インフラは直流だったが、減衰が大きいことから交流が主流となって、世界ではマイナーな送電技術というポジションに置かれていた。
*2 系統連系 発電設備などが、商用の電力網に接続すること。

14年からABBとHVDC事業を展開

 日立は2015年に国内でのHVDC事業展開のためにスイスABBと合弁で日立ABB HVDCテクノロジーズ(以下、日立ABB HVDC)を設立。既に国内の変電所などから系統連系のための設備を受注するなど活動を展開している。

 例えばその1つが、中部電力東清水変電所向けの2基の周波数変換装置。自励式(詳細は後述)と呼ぶHVDC技術を用いたもので、交流を直流に変換して東日本の50Hzと西日本の60Hzという異なる周波数の系統連系を強化する(図1)。送電容量が増し、電力の信頼性が高まると期待されている。

図1 周波数変換装置のイメージ
図1 周波数変換装置のイメージ
自励式(VSC)高圧直流送電(HVDC)技術を用いた周波数変換装置を中部電力の東清水変電所に納入する。(出所:ABB)
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 日立は、送配電網(パワーグリッド)をグループにおける中核事業の1つと位置付け、同事業の強化に力を入れている。18年にABBのパワーグリッド部門の買収を発表し、20年7月に買収を完了。日立が80.1%の株式を取得し、スイスHitachi ABB Power Grids(日立ABB パワーグリッド社)として活動を始めた*3

*3 2023年以降に完全子会社化を予定している。

 ABBからパワーグリッド事業全体を買収したことで、日立はさらなる事業強化を狙う。HVDCについても、ABBは欧州を中心に多くのHVDC納入実績を持っており、国内にとどまらずグローバルでHVDC事業を拡大しようとしている(図2)。

図2 ABBがHVDC設備を納入したNord Linkの設備
図2 ABBがHVDC設備を納入したNord Linkの設備
Nord Linkは、ドイツとノルウェーの2国間を結ぶ国際連系線。送電容量は1400MWで、ケーブルの長さはHVDCによる送電としては欧州最長の623kmに及ぶ。再エネの余剰電力を相互に融通し合い電力の安定供給を実現する。(出所:日立製作所)
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