「日本の品質」が揺らいでいる。製品不具合が頻発。品質偽装も繰り返され、日本の製造業に対する信頼が失われている。日経ものづくりが実施した独自アンケート調査の結果からは、海外製品との激しい競争や急変する市場の中で、適正な品質を見失っている日本の製造業界のいびつさが浮かび上がる。失われた信頼を取り戻し、高い競争力を再び手にするために日本の製造業は「品質」にどう向き合うべきか。今後、日本の製造業が確保すべき「品質」を再定義する。

「日本の品質」が揺らいでいる。製品不具合が頻発。品質偽装も繰り返され、日本の製造業に対する信頼が失われている。日経ものづくりが実施した独自アンケート調査の結果からは、海外製品との激しい競争や急変する市場の中で、適正な品質を見失っている日本の製造業界のいびつさが浮かび上がる。失われた信頼を取り戻し、高い競争力を再び手にするために日本の製造業は「品質」にどう向き合うべきか。今後、日本の製造業が確保すべき「品質」を再定義する。
Part1 序章
日本企業や製品の信頼を脅かす「品質問題」の連鎖に歯止めがかからない。ここ5年を振り返ると、深刻なものだけで40あまりの品質問題が発生している。
Part1 序章
日本企業や製品の信頼を脅かす「品質問題」の連鎖に歯止めがかからない。ここ5年を振り返ると、深刻なものだけで40あまりの品質問題が発生している。まるで亀裂が生じた後、それが進展していき、ついには破断に至る“金属疲労”現象であるかのように、日本企業をむしばみ続けてきた品質の弱体化が白日の下にさらされて…
Part2 真相
日本の製造業で相次いで発覚する品質問題(Part1参照)。品質検査データの偽装や認証の不適合隠蔽といった品質不正では、企業が全社を挙げて原因を調査し、報告書をまとめ、再発防止策を練る。それでも品質不正の発生は後を絶たない。
Part3 実態 高すぎる要求品質
顧客からの要求品質が過剰だ─。日経ものづくりが2021年4~5月に実施したアンケート「日本製造業の『品質』に関する調査」では、過剰品質を感じている割合が8割弱に上っていた。
竹村孝宏氏 〔イントランスHRMソリューションズ 代表取締役社長(元デンソー)〕
日本人には高品質を求める気質があります。例えば、日本の自動車業界では世の中にある最高品質の製品を「ベンチマーク」とし、それを超える製品の開発を目指す文化が定着しています。結果的に素晴らしい機能や耐久性を持つ製品が日本から生まれました。ただ一方で、消費者が必要とする品質を超えた高価な製品も数多くあり…
Part3 実態 買い叩かれる品質
品質とコストのアンバランスを招く要因は過剰品質だけではない。仮に過剰品質でなくても、その品質を実現するコストに見合った価格でなければ、部品メーカーや加工メーカーは利益を上げられない。結果、顧客が求める品質を維持するのも難しくなる。アンケート調査の結果をみると、製造コストに見合わない価格で買い叩かれ…
小田 淳 氏〔ロジ代表(元ソニー設計者)〕
よく「品質問題」と言いますが、「品質」に影響を与えるものとしては、次の2つがあると思います。1つは技術の良しあし、もう1つは仕事の仕方の良しあしです。
Part3 実態 追い込まれる現場
市場ニーズも現場の状況も知らない発注元の顧客が、必要以上の品質を求める。こうした過剰品質を、製造業界では多くの人が当たり前のように認識している。しかも激しい価格競争の中で低コスト化が進み、品質への十分な対価も支払われず、悪条件下で手間ばかり増える。このような状況に追い込まれた現場が、品質問題発生の…
Part3 実態 適質適価の3カ条
日本の製造業が世界で勝ち抜くには、やはりダントツの品質が必要だ。ただし、従来の「硬直化した品質」、つまり前例を最低レベルとして維持もしくは向上し続けるという品質ではない。市場や顧客のニーズからずれて付加価値の向上につながらず、品質とコストのバランスが崩れるリスクが高いからだ。
佐々木眞一 氏(日本科学技術連盟 理事長 トヨタ自動車 元副社長)
近年、「品質」を製品やサービスがある基準に合致しているという狭い意味で使うことが多いように思えます。「品質」という概念はそもそも、顧客や社会のニーズを満たす度合いを測る尺度として導入されてきたものです。顧客や社会が変われば、品質で測るべき対象も測り方も変わってきます。ところが、日本の産業界を全体的…