日本企業や製品の信頼を脅かす「品質問題」の連鎖に歯止めがかからない。ここ5年を振り返ると、深刻なものだけで40あまりの品質問題が発生している(Part1 序章 止まらない品質問題参照)。まるで亀裂が生じた後、それが進展していき、ついには破断に至る“金属疲労"現象であるかのように、日本企業をむしばみ続けてきた品質の弱体化が白日の下にさらされている(図1)。
この品質問題には、品質データ偽装や検査不正などの不正はもちろん、大規模リコール(無償回収・修理)に至る品質不具合も含んでいる。悪意の有無に差はあるが、企業にもたらす負の影響は共に大きい。部品の共通化などが進んだ影響で、品質不具合が1つ生じるとリコールの数が大きく膨らむ傾向がある。
日本企業の品質に“金属疲労”
品質問題の“亀裂”の始まりは2016年。同年4月に三菱自動車の燃費試験不正が、同年6月に神鋼鋼線ステンレス(大阪府泉佐野市)の試験データ改ざんが発覚した。
三菱自動車は、試験時のデータ(走行抵抗値)を恣意的に改ざんし、軽自動車の低燃費を偽っていた。すぐにスズキの燃費不正も発覚。世間に与えた衝撃が収まらない中、翌年の17年には複数の自動車メーカーによる車両の完成検査不正の発覚へと“亀裂"は進展していった。
一方、神鋼鋼線ステンレスでは、ばね用ステンレス鋼線の強度試験データの改ざんが発覚し、日本産業規格(JIS、当時は日本工業規格)認証を取り消された。孫会社のこの不祥事をきっかけに神戸製鋼所が品質監査を実施したところ、アルミニウム合金や銅、鉄鋼製品などで検査データの改ざんや検査の未実施という不正の実態が次から次へと明るみになった。
これが社会的な問題にもなった一連の「品質データ偽装問題」となって“亀裂”の進展は一気に速度を増していく。神戸製鋼所と同社グループに限らず、日本企業の多くが品質データ偽装に手を染めており、不正内容の公表と謝罪を余儀なくされたからだ。
世間の批判に応える形で、重い腰を上げたのが日本経済団体連合会(経団連)である。経団連は、加盟企業を対象に実施した品質データ偽装に関する調査結果を18年2月に発表した上で、「一定の効果があった〔膿(うみ)を出し切ったという意味〕」(経団連)と幕引きを図ろうとした。