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 日本の製造業で相次いで発覚する品質問題(Part1:序章 止まらない品質問題Part1:序章 偽装に不具合、設計不正、日本をむしばむ品質の病)。品質検査データの偽装や認証の不適合隠蔽といった品質不正では、企業が全社を挙げて原因を調査し、報告書をまとめ、再発防止策を練る。それでも品質不正の発生は後を絶たない。

 品質不正に至らなくても、日本製造業がこれまで積み上げてきた信頼を損ない、競争力を低下させるような設計・製造上の品質不具合も多発している。その背景には、適切な品質に対して相応のコストを払う「適質適価」の喪失がありそうだ。

 本稿では、その背景と問題点を分析し、目指すべき適質適価実現の道筋を探る。

4割弱が品質不正に見聞あり

 日経ものづくりは2021年4~5月、「日本製造業の『品質』に関する調査」を実施した(調査概要については「回答者プロフィール」参照)。その中で「所属する企業や組織、取引先などで、品質不正(品質データの偽装や改ざんなど)が行われていたという情報を見聞きしたことがあるか」を聞いたところ、4割弱が「見聞きしたことがある」と回答している(図1)。

図1 4割が「品質不正を見聞きしたことがある」
図1 4割が「品質不正を見聞きしたことがある」
日経ものづくりが2021年4月に実施した「日本製造業の『品質』に関する調査」の結果。「所属する企業や組織、取引先などで、品質不正(品質データの偽装や改ざんなど)が行われていたという情報を見聞きしたことがあるか」という設問に対して、4割弱が「見聞きしたことがある」と回答している。(出所:日経ものづくり)
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 この結果は、日本の製造業にまん延する品質不正という病根の根深さを示している。社会問題化して大きな注目を集め、各企業が「品質検査の強化」や「従業員に対するコンプライアンス教育」といった対症療法的な再発防止策を打ち出しても、新たな企業、新たな領域での品質問題が発覚していく。

 今回実施したアンケート調査に寄せられた自由記述では、品質問題を誘発している実態と課題に対する切実な声が多かった。それらの記述を分析すると、品質不正に限らず、日本製造業の競争力を支えてきた品質の危機的な状況が分かってきた。