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  • [1]市場・顧客が必要とする品質を見極める
  • [2]販売・納品後まで配慮した企画・設計を追求する
  • [3]フラットな関係の製造チームを構築する

 日本の製造業が世界で勝ち抜くには、やはりダントツの品質が必要だ。ただし、従来の「硬直化した品質」、つまり前例を最低レベルとして維持もしくは向上し続けるという品質ではない。市場や顧客のニーズからずれて付加価値の向上につながらず、品質とコストのバランスが崩れるリスクが高いからだ。

 品質とコストのバランスが崩れたまま製品を造り続ければ、そのゆがみを誰かが負担しなければならない。海外企業との競争激化にさらされている日本の製造業は、このゆがみを吸収したり、是正したりする余力を失っている。その結果がさまざまな品質問題となって噴出した。この窮状から脱するには、品質を「適質適価」に改めるのが急務だろう。

 適質適価を実現するためには、[1]市場・顧客(エンドユーザー)が必要とする品質を見極める[2]販売・納品後まで配慮した企画・設計を追求する[3]フラットな関係の製造チームを構築する、という3つが基本戦略となる。

ニーズの取捨選択とレベル分けが必要

 適質適価の基本となるのが、品質の定義と見極めだ。そこでは、メーカーによる市場との対話が不可欠である。製品を売る顧客(市場)を見極めた上で、ターゲットとなる消費者や事業者が何を望んでいるのかを分析し、必要な品質と不要な品質を「取捨選択」する。それぞれの品質でどの程度のレベルにすべきかを明らかにする形だ(図1)。

図1  「取捨選択」と「レベル分け」が必要
図1  「取捨選択」と「レベル分け」が必要
製品によって、市場・顧客が何を望んでいるかを分析して品質を「取捨選択」し、どの程度の品質を求めているのか「レベル分け」 する。(出所:日経ものづくり)
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 この見定めが、製品の本来持つべき価値を創造し、適質適価を実現する土台となる。ここを見誤ると、「付加価値を生まないがコストがかかる品質」が残り、「ムダに高品質の製品を安く売る」という状況に追い込まれる。結果、「付加価値を生む品質」にも十分に投資できなくなってしまう。

 顧客ニーズをベースに見極めた品質レベルは、製品の具体的な機能や仕様へと反映され、製品を構成する部品や材料の品質にも展開される。もちろん、顧客がそのニーズに対して支払う対価(製品の価格)も前提となるので、目標とする製造原価が適正なのかどうかも判断できる。

 ここで1つ注意すべきなのが、品質を常に見直し続けなくてはならない点だ。技術の進化や社会の変化とともに顧客のニーズは変化し続ける。この変化にきちんと対応しないと、いつの間にか時代に取り残された「古い品質」で勝負することになり、競争力を失ってしまう。

 例えば、詳細な情報をリアルタイムに収集・分析できるデジタル技術と、アディティブ製造(3Dプリンティング)のような製造技術の進化は、個別最適化した製品の低価格供給を可能にしつつある。従来は想像もできなかったような価値が生まれれば、それを求める顧客も増える。単純に「良いものを安く」という大量生産の考え方からは脱却する必要がある。