コマツは、生産設備の状況を見える化する産業IoT(Internet of Things)システムを開発して、生産効率を高めている。システムの名称は「KOM-MICS」(図1)。よくあるIoTシステムと大きく異なるのは、自社工場だけでなく、部品生産を外注している協力企業の工場にも同システムを無償提供し、サプライチェーン全体の改善を進めている点だ。
「工場をただ見える化するだけでなく、実際の改善活動につながっており、投資に見合った成果が上がっている」─。コマツ生産本部生産技術開発センタシステムグループGMの名畑英二氏は、こう胸を張る。
データはタブレット端末で収集
2021年3月末時点でKOM-MICSを導入しているのは、コマツとそのグループ会社を含む24拠点、協力企業78社に及ぶ。国内外にある約1450台の生産設備をクラウドに接続し、稼働状態を一元管理する体制を作り上げた。マシニングセンターや溶接ロボットといった、建設機械の部品を生産する設備の稼働状況を、リアルタイムで可視化できる。
稼働データの収集に当たっては、産業用のタブレット端末を工場の生産設備に接続。同端末で、各設備のコントローラーからNCプログラムや加工時の主軸の切削抵抗といったデータを集め、それをクラウドサーバーに送っている。さまざまな設備に対応するため、「MTConnect」「OPC UA」など9種類の産業用データ交換規格が使える。
集めたデータはクラウド上で管理し、独自開発したアプリで分析できるようにした。21年8月末時点でアプリの数は40種類。アプリやその分析結果はKOM-MICSのダッシュボード画面から利用・閲覧できる(図2)。
これまで同社はKOM-MICSによるデータ収集・分析を基に、個々の設備単位の改善で成果を上げている。その1つが、同社の大阪工場における溶接ロボットの生産性向上だ(図3)。
具体的には、溶接ロボットから収集したデータを基に、「溶接」「移動」「計画停止」「搬入出」といった動作時間を分類して見える化した。例えば、ある工程ではロボット2台を導入していたが、稼働させていたのは1度に1台ずつだったので、もう1台のロボットの待ち時間に無駄があると分かった。
そこで、なるべくロボット2台を同時に稼働させて溶接できるようにプログラムを変更したところ、サイクルタイムを14%減らせた。こうした対策の積み重ねが功を奏し、同社大阪工場は溶接ロボットによる単位作業あたりに必要な時間を3年10カ月の間に46%削減できたという(図4)。