ドイツが2011年に産業政策「インダストリー4.0」を掲げてから今年で10年の節目になる。そもそも、インダストリー4.0とは何を目指していたのだろうか。「デジタルツイン」や「マスカスタマイゼーション」といったキーワードが示したスマート工場の理想はいま、どこまで実現できているのだろうか。製造業におけるデジタル化の現状と課題を探る。

インダストリー4.0 10年目の現実
目次
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インダストリー4.0とは何だったのか、登場から10年を機に振り返る
総論
「インダストリー4.0(Industry 4.0)」というキーワードが2011年に登場してから、今年で10年の節目になる。インダストリー4.0は、大まかには「製造業のデジタル化を進めて生産情報を可視化し、新しいビジネスモデルにつなげよう」というコンセプトだ。
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IoTで現場のデジタル化に成果、つながる工場は実現途上
[インタビュー]西岡 靖之 氏〔法政大学デザイン工学部教授、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)理事長〕
2011年にドイツ政府が技術政策として「インダストリー4.0(Industry 4.0)」を提唱してから10年。日本の製造業も、このキーワードを意識しつつ、生産の高度化に取り組んできた。果たして10年前に思い描いたような形で発展を遂げられたのか。
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普及の上昇気流になかなか乗れず、ブームだった製造業向けIoT基盤のいま
Part2 産業IoT基盤の動向
「産業向けIoT基盤(IoTプラットフォーム)はあまり流行っていないのではないか」─。スマート工場の動向を取材しているうちに、ある制御機器メーカーの関係者から聞こえてきた話である。
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“名付け親”が語った誕生と成長、今後のカギは製造現場の知見の強化
Part3 ドイツの視点
インダストリー4.0は、2011年4月に開催された世界最大級の産業技術の展示会ハノーバーメッセで初めて提唱された。それからちょうど10年の節目に当たる「HANNOVER MESSE 2021: Digital Edition」(2021年4月12~16日)で、「インダストリー4.0の10年、国際的…
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「世界よりも遅れている」が6割、6年前より悲観的な見方広がる
Part4 数字で見る現場 調査テーマ「スマート工場の現状と取り組み」に関する調査
「日本のスマート工場の取り組みは世界に比べて遅れている」。日経ものづくりが実施したアンケート調査で、回答者の6割がこう回答した。2015年9月号の同じ調査と比べて悲観的な結果となった。
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フォークリフトに3台のカメラ、映像を分析し、搬送効率を向上
Part5 IVIの実証 AIによる物流業務の無駄取り
IoT(Internet of Things)技術などを活用した次世代のものづくりに向けて企業間の連携を目指す「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」。
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溶着の自動検査システムを溶接へ、流用9割の「活用天国」
Part5 IVIの実証 費用ゼロで横展開
CKDなどの社員からなるワーキンググループ(WG)は検査向け自動化プラットフォームの応用展開に取り組んだ。同WGは2019年度まで、温湿度センサーや産業用のエッジコンピューター「RT-edge」(マイクロネット)を使って溶接工程での不良発生原因を分析していた。
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マスカスタマイゼーションに必須、工場を超えて生産進捗を共有
Part5 IVIの実証 企業間をBOMで連携
荏原製作所やIHIなどの社員からなるワーキンググループ(WG)は、サプライチェーンの上流から下流までの企業が部品表(BOM)を共有するシステムを構築し、お互いの生産進捗を可視化した。
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打ち抜き荷重からバリを予測、99%超の高精度で摩耗を判別
Part5 IVIの実証 金型の予知保全
CKDや栗田産業(静岡市)などの社員からなるワーキンググループ(WG)は金型の予知保全に取り組んだ。CKDが販売する医薬品用のブリスター包装機を保全の対象とした。
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AIに固執せず適材適所を追求、ヤマハ発動機に見る成功の秘訣
Part5 IVIの実証 PoC止まり解決事例
いま、AIやDXなどの導入プロジェクトで、PoC(Proof of Concept、概念検証)を実施してもそこから先へ進めなくなる「PoC止まり」が多くの企業で発生している。