あらゆる産業がカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)に向かう中、日本が得意とする材料技術を生かさない手はない。材料のバイオマス化による化石資源の使用量削減と、高機能化材料の利用によるエネルギーの節約を軸として、多様で個性的な材料技術が脱炭素を推進する。

カーボンニュートラルな材料
目次
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カーボンニュートラルな材料たち
自然から生まれて再び自然に返る植物由来・生分解性プラスチック。PLA(ポリ乳酸)は、2021年現在のバイオプラスチックの代表格といえる。射出成形などの成形技術で日本が世界の先端を走っている。
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バイオマスと機能向上で脱炭素、2つの軸で材料技術が貢献
Part1 総論
気候変動への社会的な懸念が本格化する中、二酸化炭素(CO2)をはじめとした温暖化ガスの排出量を削減し、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)を実現する手段として新材料に注目が集まる。
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成形技術で世界をリード、「本物志向」の製品化に突き進め
Part2 日本が強いPLA
カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)時代に入り、その有用性に関わらず、化石資源由来のプラスチックに対する風当たりが強くなった。半面、世間から好印象を受けるようになったのが、植物をはじめ再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とするバイオプラスチックだ。
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廃棄豚骨と重曹で高性能実現、汚染水を低コストで浄化
Part3 バイオマスで脱炭素[日本原子力研究開発機構 金属吸着剤]
ラーメン店の「廃棄豚骨(とんこつ)」で、放射性物質で汚染された水が浄化される─。安価かつ大量生産が可能な金属吸着剤を、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)と東京大学大学院理学系研究科が開発した。
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海水でも生分解するバイオマス、機械的特性と加工法はABS並み
Part3 バイオマスで脱炭素[ダイセル 酢酸セルロース]
ダイセルは、海水での生分解性に優れたプラスチックを開発した。酢酸セルロース(アセチルセルロース)「CAFBLO」で、2021年9月にテュフ・オーストリアによる海洋生分解性の国際認証「OK biodegradable MARINE」を取得。
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厳しいトヨタの採用基準もクリア、意匠性の高さにコスト削減の魅力も
Part3 バイオマスで脱炭素[三菱ケミカル バイオポリカーボネート]
「石橋をたたいて壊すつもりかと疑うほど、トヨタは新しい材料に対する採用基準が厳しい」と材料業界で噂されるトヨタ自動車が、バイオプラスチック(以下、バイオプラ)の採用に関して積極姿勢に転じた。
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サトウキビ由来で包装プラの複合化、従来品と同等以上の接着力を確保
Part3 バイオマスで脱炭素[三井化学 接着性ポリオレフィン]
PE(ポリエチレン)やPA(ポリアミド)といったプラスチックは、食品や化粧品といった製品の容器包装などに使われる身近な材料だ。いま、そんなプラスチックを使った容器が少しずつ、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない材料に置き換わろうとしている。
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加工コスト抑え日産が車体に採用、遅れ破壊と成形不良を克服
Part4 機能性で脱炭素[ユニプレス 1.5GPa級ハイテン冷間プレス]
カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)時代に入り、自動車の軽量化開発がこれまで以上に加速している。ハイテン材の利用が広がり、比較的低コストで加工できる冷間プレスに注目度が高まっている。
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金属を超える冷却性能も可能、構造材へ熱の通り道を自由に配置
Part4 機能性で脱炭素[東レ 高熱伝導CFRP]
軽量化が求められる製品では、しばしば部品の小型化や高密度化などに伴って熱のコントロールも必要になる。例えば、電気自動車(EV)やドローンは、モーターなどを効率的に冷却できるのが望ましい。
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劣化を防ぎ車体の樹脂化を後押し、薬品が浸透せずクラック阻止
Part4 機能性で脱炭素[三洋化成工業 ABS耐薬品性向上剤]
三洋化成工業は熱可塑性プラスチックであるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂の耐薬品性を向上させる添加剤「ファンクティブ」を開発した。ABS樹脂は剛性と耐衝撃性のバランスが良く、自動車の内外装部材などとして多く使用されている。
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個性を生かして温暖化防止、貢献する方法は多種多様
Part5 まだまだある脱炭素材料[まだまだある脱炭素材料]
東京都立大学と北里研究所、横浜国立大学、名古屋市立大学は、特定の蒸気を感知して可逆的に変形・変色する繊維状物質を開発した。フェニル基を2個付加したチオフェン分子6個から成る環状分子。