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 太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギー(再エネ)は、安全で二酸化炭素(CO2)を排出しない電力として、脱炭素には欠かせない電源とされる。政府は2021年10月に公表した第6次エネルギー基本計画で「再エネの主電源化を徹底する」と掲げ、電源構成における再エネ比率の引き上げ目標を示した。具体的には、19年度の18%から30年度は36~38%を目指す(図1)。

図1 高まる再生可能エネルギーの比率
図1 高まる再生可能エネルギーの比率
政府は2021年10月に示した第6次エネルギー基本計画で、電源構成における再生可能エネルギーの比率を示した。19年度の18%から、30年度は36~38%への引き上げを目指す。(出所:資源エネルギー庁)
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 国の電源構成は、脱炭素を目指す製造業にとって、少なからず影響がある。工場の稼働に必要な電力の再エネ比率によって、製品の製造時のCO2排出量が変わってくるからだ。影響は多方面に及ぶ。バッテリーに充電した電力で走る電気自動車(EV)であれば、その国の電源構成で、走行時のCO2排出量が左右される(Part2参照)。

 日本の再エネの主流である太陽光発電の導入コストは着実に安くなっている。FIT(固定価格買取)制度に支えられ、国内の導入量は増加の一途だ。政府の試算によると、20年度における国内の事業用太陽光の発電コストは12.9円/kWhと、石炭火力(12.5円/kWh)やLNG火力(10.7円/kWh)、原子力(11.5~円/kWh)に迫っている*1。依然として、日本における太陽光発電の導入コストは世界と比べて割高とされるものの、国内の他電源と比べて際立って高いという訳でもない。

*1 2020年に新しい発電設備を更地に建設した場合のコストを一定の条件で機械的に算出している。経済産業省「基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告」。2021年9月14日。

 本誌のアンケート調査の結果を見ると、再エネ比率を高める政府目標に対し、多くの人が懐疑的に感じているようだ(Part5参照)。回答者の68.7%が、「政府目標は達成できない」と答えた。

 人々が懐疑的な見方をする背景には、再エネの持つ2つの弱点がある。1つは設備の設置場所に限りがあること。もう1つは、電力出力が天候に左右されやすいことだ。もっとも、これらの指摘は脱炭素の流れが加速する以前からあった。

 本稿では、国内の再エネの約3分の1強を占める太陽光発電と、今後の市場拡大が期待されている風力発電に着目した上で、2つの弱点について考えてみる。

面積当たりの発電量が小さい

 太陽光発電や風力発電は、広い設置面積を必要とする割に、発電量が小さい。例えば、18年10月に操業を開始した日本最大級の太陽光発電所「瀬戸内 Kirei 太陽光発電所」(図2)。約260ha(東京ドーム56個分)の敷地を持ち、多結晶シリコン型の太陽光パネル約90万枚が日光を浴びる。最大出力は235MW。一般家庭約8万世帯分に相当する電力を供給できる規模だ。

図2 瀬戸内 Kirei 太陽光発電所
図2 瀬戸内 Kirei 太陽光発電所
岡山県瀬戸内市に建設された日本最大級の太陽光発電所。操業開始は18年10月。敷地面積260ha、最大出力235MW。(出所:瀬戸内 Kirei 未来創り合同会社)
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 しかし、この数字は最新の火力発電所1基の出力に満たない。例えば、20年6月に運転を開始した電源開発の竹原火力発電所(広島県竹原市)の新1号機は、単体で600MWの最大出力がある(図3)。

図3 竹原火力発電所
図3 竹原火力発電所
電源開発が広島県竹原市に設置する石炭火力発電所。20年6月に運転を開始した新1号機は最大出力600MW。敷地内の3号機と併せた最大出力は合計1.3GW。(出所:電源開発)
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 風力発電も、広い設置面積が必要なのは同じ。陸上風力発電の適地は、風速6m/s以上の地域とされるが、一度に面積を確保しやすい海岸沿いで見ると、日本では北海道や東北など一部の地域に限られている。「開発しやすい平地の適所が減少しているためか、近年では山間部に陸上風力発電所を設置する案件の割合が増えている」(資源エネルギー庁)。

 「ウィンドファームつがる」(青森県つがる市)は、陸上風力発電所として国内最大規模を誇る(図4)。20年4月に商業運転を始めた。長さ約50mのブレード(羽根)を備えた風力発電機38基を設置して、総出力121.6MWの電力を生み出している。その敷地は広大だ。同発電所の風力発電機は、青森県の日本海側の海岸、およそ南北10kmの範囲に点在している。

図4 ウィンドファームつがる
図4 ウィンドファームつがる
青森県つがる市にある国内最大規模の陸上風力発電所。20年4月に商業運転を始めた。総出力121.6MW。日本海に沿った南北約10kmの地域に38基の風力発電機が点在する。(出所:グリーンパワーインベストメント)
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 再エネで火力発電所や原子力発電所と同じ発電量を確保しようとすれば、設置場所に苦労するのは目に見えている。