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 筆者はサプライチェーンのコンサルティング会社に属している。コロナ禍以前と以後では、問い合わせの内容が異なっている。以前は、「働き方改革」「人工知能(AI)/RPA(Robotic Process Automation)の活用」といったテーマが多かった。それがコロナ禍以後は、「働き方改革」はピタリとなくなった。AIもRPAも現実的な応用に限界があると企業が感じたのか、次のデジタルトランスフォーメーション(DX)にテーマが移っていった。そして、コロナ禍以後に増えたのがコスト削減の相談や、在庫に関わる相談だ。

 在庫についての相談は、コロナ禍以前は在庫を減らしたいという内容が一般的だった。しかし、コロナ禍が良くも悪くも一段落し、世界経済が予想以上に早く回復し需要が高まってくる中で、在庫をむしろ増やせないかとの相談が多くなった。製品や商品の在庫というよりも、原材料や部材・部品の在庫を確保したいという意味だ。昨今、半導体不足や樹脂材などの原材料不足が一般のニュースになるほどであり、何とか原材料や部材・部品を買い集めて在庫を増やし、生産を止めないようにしたいというのだ。

 JIT(ジャスト・イン・タイム)という言葉がある。これはサプライチェーンでサプライヤーに対して、必要なものを、必要なときに、必要な数量を納品してもらうための手法だ。原材料や部材・部品の在庫を減らすには有効であり、これまで多くの企業が追求してきた。

 ただ、考えれば当たり前なのだが、これはサプライヤーが必ず納品してくれることを前提としている。それにもし、在庫を持つメリットがデメリット(生産が停止するなど)を上回るのであれば、在庫は持つべきだ。

 それまで在庫削減に必死になって取り組んできた企業が、物不足の現実の前に、在庫を積み上げようと方針を大きく変えている。筆者は、コペルニクス的転回の場面に立ち会っている気持ちになった。

(写真:123RF)
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