企業概要
日新精機
設立:1973年 従業員数:24人(2022年5月時点) 事業内容:金型の設計製作、超硬部品加工、各種金属部品加工など
冷間鍛造用の金型製造を得意とする日新精機(埼玉県春日部市)。新しい取り組みに挑戦し続ける姿勢が、ひときわ存在感を高めている。
室温・常温で金属を塑性変形させるのが日新精機の得意とする冷間鍛造だ。その最大のメリットは、室温で加工できるため、生産性が高く、加工コストも熱間に比べて低い点にある。熱間鍛造では素材を数百~1000℃程度に加熱する工程が必要だが、冷間鍛造はそれがない。鍛造用のプレス機などに素材(ビレットなど)さえ供給できれば、連続的に生産できる量産性に優れた製法だ。ただし、硬い金属材料を塑性変形させるため、金型の材料にはさらに硬く加工しにくい超硬合金などを用いる(図1)。その加工技術が、金型メーカーの腕の見せどころというわけだ。
ハードもソフトも、あるものはフル活用
「設備やソフトウエアをフル活用」。これが、日新精機代表取締役社長の中村稔氏が掲げる日新精機の経営指針である。工場には使い古されたボール盤から最新のNCワイヤ放電加工機までそろっており、どれも役割を持って稼働している。職人の技術に頼った実績のある加工方法はもちろん、最新の放電加工機を導入して若手でもベテランと同等の品質をつくり込める環境を整備している。
例えば、超硬合金製金型の外形形状の加工には、最新のNC放電加工機を使う。一方、その超硬合金に開ける細長い穴の研磨に使うのは古いボール盤である。特殊な研磨剤でコーティングした細い棒を取り付けて使う。数μmという厳しい公差を実現するためという。
「ワイヤ放電加工機でも加工できるが、リードタイムを考えると昔から実績のあるボール盤や旋盤を使う研磨の方が早いため、使い分けている」(同氏)。そのため、オリーブオイルとダイヤモンドパウダーを独自の配合で混ぜ合わせた独自の研磨剤を使っている(図2)。
スイスAgieCharmilles社製の型彫放電加工機を複数台導入しているのも、「設備やソフトウエアをフル活用」というポリシーの表れだ(図3)。同社の機械は加工精度が高いだけでなく、自動化を目的とした機能が充実している。「ツールチェンジャーを搭載しているので、ワークの段取りをしてしまえば無人での長時間稼働が可能な点が魅力」と同氏は語る。