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 概要 
愛知総合工科高等学校専攻科
設立:2017年 専攻科2年制 学生数:2学年80人 学科:高度技術科、先端技術科など

今回は番外編として、工場の未来を担う人材が技術・技能を学ぶ愛知県立愛知総合工科高等学校専攻科を訪れた。将来の現場リーダーの育成に取り組んでいる。

 日本の製造業の競争力が、熟練技能者の高度な技能や技術に支えられていることに異論を持つ人は少ないだろう。しかし、そうした技術や技能の多くは、現場でたたき上げて身に付ける。その習得には長い時間がかかるため、次世代を担う若者たちの中で技能者を志望する者の数は近年伸び悩んでいる。

 そこで、より実践的な教育によってものづくりの即戦力となる人材を育成しようという新しい試みが始まっている。愛知県が「国家戦略特区制度」の認定を受けて、全国初の公設民営として2017年に設置した愛知県立愛知総合工科高等学校専攻科が、その一例だ(図1*1

図1 協働ロボットの実習風景
図1 協働ロボットの実習風景
生徒に1台ずつ最新の小型協働ロボットが使える環境を整えている。企業でも珍しいこうした経験を経て社会人となった若者たちが、製造現場にロボットがいる風景を当たり前にしていくのだろう。(写真:愛知県立愛知総合工科高等学校)
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*1 愛知総合工科高校の前身は東山工業高校と愛知工業高校という2つの工業高校。それぞれ50年、120年の歴史を持つ。この2校を合併する形で、同工科高校が設立された。

 ものづくりの技能者の教育機関としては、工業高校や高等専門学校(高専)が知られているが、より徹底した少人数個別教育で、次世代のリーダーとなる技術者・技能者「高度ものづくり人材」を育成するのが同工科高校専攻科の狙い。「工業高校」ではなく「工科高校」という名称には、エンジニアリング(工学)だけではなく、エンジニアリングとサイエンス(科学)をどちらもバランスよく身に付けてほしいとの願いが込められている。実際、本科では狙い通り科学の知識・技術を会得した学生が増え、卒業生の半分ほどが大学に進んでいる。