品質と生産性を高めるための道具「治具」
あらためて治具について説明しておく。私たちが手にする製品の多くは、「量産品」である。安定した品質で量産するには、その加工や組み立て、検査のオペレーションを高い精度で迅速に繰り返さなければならない。そこで、加工や組み立ての際に、部品の位置決めや固定といった作業を精度良く、安全・迅速に行うために使うのが治具である(図1)。いわば品質と生産性を高めるための道具だ。
治具には固定する対象物や用途の違いによってさまざまな種類がある(表)。例えば同じワークの位置決め・固定用の治具でも、使う工程によって固定治具、切断治具、検査治具などと分類できる。塗装やメッキを高品質かつ安定して処理するための塗装治具、メッキ治具と呼ぶ治具もある*。
治具の種類例 | 用途の説明 |
固定治具 | ワークを固定し加工や組み立てを補助する |
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切断治具 | ワークを固定し切断を補助する |
挿入治具 引抜治具 |
ワークの決まった位置への挿入または決まった位置からの引き抜きを補助する |
溶着治具 | 材料同士の接着を補助する |
塗装治具 マスキング治具 |
材料の塗装およびマスキングを補助する |
メッキ治具 | メッキ作業を補助する |
カシメ治具 | ワークの接合部分の固定を補助する |
検査治具 | 完成品を固定し検査を補助する |
求められた役割を果たすため、治具そのものも、同じ品質の治具を安定して造る必要がある。高精度加工のための治具なら、そのワークの加工精度以上の精度が治具の作製にも求められる。
「日本製」に期待される高品質、高精度。それ故、日本でトップシェアを誇るナベヤの治具にも「日本製」の高品質を守るための精度が求められる。μmオーダーの寸法精度、鏡面レベルの表面品質といった高いレベルの治具を、常に同じ精度で繰り返し造れなくてはならない。