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 「現時点で開発している製品に直結しない将来の課題だからこそ協調できる」─。日本自動車工業会(自工会)が主体となって取り組むシミュレーション課題について、自工会の「デジタルエンジニアリング分科会」の梅谷浩之氏はこう説明する。

 自工会はおよそ15年間にわたり、国のスーパーコンピューターを活用したシミュレーション技術の開発に取り組んでいる*1。見据えるのは、10年先のシミュレーション(図1)。企業単体では扱いにくい、大規模かつ業界共通の課題に挑戦している。

*1 理化学研究所の「富岳」や、北海道大学が運用するスパコンなどを利用している。
図1 自工会によるスパコン活用の位置付け
図1 自工会によるスパコン活用の位置付け
日本自動車工業会は国のスパコンを活用して10年先を見据えたシミュレーション技術の開発に取り組んできた。プロジェクトの源流は地球シミュレータの時代に遡る。(日本自動車工業会の資料を基に日経ものづくりが作成)
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自動車業界の共通課題を探る

 自工会は競合メーカーが集まる業界団体である。そのため、具体的な製品開発に直結するようなシミュレーション課題を選ぶと、各社がノウハウを出しづらい。技術開発の状況を競争相手に知られてしまうためだ。すると、せっかく高性能なスパコンが使えたとしても、十分な技術革新を望めなくなる。

 そこで、自工会として取り組む課題には、業界全体で将来的に必要とされるものを選んでいる。各社が実製品の開発に応用できるよう、そのベースとなる成果を共有しようという考え方である。

 自工会が利用するシミュレーションソフトウエアは、基本的に商用かオープンソース。大学などの研究機関が進めるプロジェクトのように、独自の専用ソフトを開発してスパコンの性能を最大限まで引き出す取り組みとは、趣旨が異なるようだ。