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 「従来は非現実的とされた課題にも取り組めるようになった」。スーパーコンピューター(スパコン)「富岳」を利用したシミュレーションの実証プロジェクトを統括する東京大学生産技術研究所革新的シミュレーション研究センターの加藤千幸氏はこう期待を込める。

製造業の課題をスパコンで解決

 ここ数十年、有限要素法(FEM)による応力解析といったシミュレーション技術は、製造業における身近なツールとして普及してきた。とはいえ、一企業が利用できるコンピューターの処理能力や投入できる人的リソースには限界があり、費用対効果などの点から挑戦的な課題に取り組むのは難しい。

 そこで、製造業が必要とする革新的なシミュレーション技術を産学連携で研究開発するプロジェクトが文部科学省の主導で進む。『「富岳」を利用した革新的流体性能予測技術の研究開発』のプロジェクトだ*1

*1 文部科学省『「富岳」成果創出加速プログラム』の1つとして実施されている。2020年4月に始まったプロジェクト。

 2021年3月に完成した富岳は、現在も世界のスパコン性能ランキング「TOP500」の首位を維持している。富岳のアプリケーション性能は、先代のスパコン「京」と比べて数十~100倍ほど高い(図12*2。富岳の性能を引き出せれば、従来のスパコンでは不可能とされてきたシミュレーションも可能になる。以下は、そんな同プロジェクトの研究テーマの一部だ。

図1 スーパーコンピューター「富岳」
図1 スーパーコンピューター「富岳」
2021年3月に完成。アプリケーションの実行性能で京の100倍を目指した。TOP500におけるLINPACK性能は442PFLOPS。(出所:理化学研究所)
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図2 スーパーコンピューター「京」
図2 スーパーコンピューター「京」
2019年8月に運用を終了。TOP500におけるLINPACK性能は10.5PFLOPS。(出所:理化学研究所)
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*2 富岳と京の性能差はアプリケーションの種類によって異なる。