検査は、製造業において品質を確認する重要な手段である。人間の五感や手作業に頼る部分を減らすため、これまでは測定装置による自動化が進んできた。しかし近年は、人間の作業を代替するだけでなく、人間には不可能な速度や精度で検査したり、検査のやり方自体を変えたりする取り組みが広がりつつある。そこでは、先進的なセンサーや画像処理、人工知能(AI)などの技術が活用されている。今後の製造業に不可欠となる「検査3.0」の姿を探る。(岩野 恵、斉藤壮司、石橋拓馬)

自動化の先を行く検査3.0
目次
-
自動化を超える「検査3.0」、究極は検査のない製造現場
Part1 総論
「目視検査はもう必要ない」─。SUBARU(スバル)はカムシャフトの研削工程で、全数に対しで実施してきた目視検査を近く廃止する方針を決めた。背景には全ワークの品質を加工中のデータから予測する人工知能(AI)モデルの開発がある。
-
加工中に全ワークの品質を予測、目視による全数検査を廃止へ
Part2 活用事例[SUBARU]
SUBARU(以下、スバル)は富士通などと共同で、カムシャフト研削加工における全ワークの品質をリアルタイムで予測し、良否を判定する人工知能(AI)モデルを開発した。
-
廉価・汎用の内製で自動化を拡大、低コストな設備で効果を上げる
Part2 活用事例[ヤマハ発動機]
人手不足への対応や品質管理を徹底するために検査の自動化を進める企業は多い。ただ、人の五感が担ってきた検査の自動化は簡単ではない。導入費用が高すぎたり、十分な精度で検査できなかったりして、検査装置の導入を断念する企業が少なくない。
-
スポット溶接の不良を見抜く、電流値の変化を全打点で監視
Part2 活用事例[日産自動車]
日産自動車が2021年に栃木工場で稼働させた生産ライン「ニッサン インテリジェント ファクトリー(以下、NIF)」では、検査に関する特徴的な自動化技術を取り入れている。
-
「ありのままの形」を捉える、さまざまな材質を1度に測定
Part3 革新技術[キーエンス]
近年、製品の小型化や高密度化が加速し、形状・寸法検査においてより精密な測定が求められている。要求される品質保証度の高まりにより、従来の抜き取り検査から全数検査に切り替える動きもみられる。
-
検査結果と設備の稼働データを連携、溶接欠陥の要因を突き止める
Part3 革新技術[パナソニックコネクト]
パナソニックコネクト(東京・中央)は2021年10月末、溶接設備のデータから、溶接欠陥が生じた理由を解明・推測する機能を開発した。溶接部(溶接ビード)の外観を自動検査するシステム「Bead Eye(ビードアイ)」の検査結果と、溶接設備の稼働データを収集・蓄積・分析するシステム「iWNB(integ…
-
深層学習の導入ハードルを下げる、画像センサーに組み込み低価格化
Part3 革新技術[コグネックス]
ディープラーニング(DL、深層学習)による検査に興味はあるが、事前準備や設定、導入コストの面でハードルが高い。そうした課題に対応する製品が、米COGNEX(コグネックス)の日本法人であるコグネックス(東京・文京)が2022年4月4日に発売した、DL機能搭載の画像センサー「In-Sight 2800…
-
3D形状を高速測定する「光コム」、毎秒50万点のデータを取得
Part3 革新技術[XTIA]
レーザーを用いた新しい測定手法として「光コム」が注目されている。μmオーダーの精度かつ非接触で金属部品の寸法を測定できる。わずかに周波数の異なる複数のレーザー光を同軸上から照射する。
-
作業指示も結果入力も音声で、自動化に向かない手作業を支援
Part3 革新技術[シーネットコネクトサービス]
さまざまな検査が自動化され、効率化や精度向上が図られている。しかし、自動化が難しい検査もある。特に、人間の臨機応変な判断によって対応を柔軟に変えたり、微妙な調整が必要だったりする検査だ。
-
3次元測定器の操作画面を共通化、検査情報を統合管理して活用
Part3 革新技術[PolyWorks Japan]
3次元測定器は、測定対象の物体表面の3次元座標を測定する装置である。ノギスやマイクロメーターといった測定器では対応しづらい自由曲面や複雑な構造の形状、寸法、位置などを効率的に知ることができる。