人手不足への対応や品質管理を徹底するために検査の自動化を進める企業は多い。ただ、人の五感が担ってきた検査の自動化は簡単ではない。導入費用が高すぎたり、十分な精度で検査できなかったりして、検査装置の導入を断念する企業が少なくない。ヤマハ発動機はそうした壁を乗り越えるため、検査の自動化に取り組む領域を厳選。特に費用対効果が小さな領域でも、生産現場の実態に合った自動化ツールを安く造り、次々と検査を自動化している。
優先順位を決めて2つの領域から自動化
どの検査を優先的に自動化するかを考えるに当たって、まず同社は多種多様な検査を整理した(図1)。縦軸に現状の工数(自動化で得られる効果の大きさ)、横軸に検査の難易度(検査をする人の精神的・肉体的負担の大きさ、機械化の難しさを考慮)を取った分類だ。左上の「工数が多く、検査の難易度が低い」領域は既に自動化が進んでいた。
そこで、これから自動化を狙う領域としては左下の「工数が少なく、検査の難易度が低い」領域と右上の「工数が多く、検査の難易度が高い」領域の2つに取り組むことにした。前者は自動化ツールの内製を基本として導入コストを抑え、費用対効果を確保する。後者に関しては、大きな効果が見込めるので、内製が難しい場合は外部のツールなども活用して解決していく。
こうして、検査自動化の裾野を広げつつ、自動化の実績を増やしていく。蓄積したノウハウを活用し、将来的には費用対効果が比較的小さいと予想される、右下の「工数が少なく、難易度が高い」領域へと自動化の範囲を広げていく計画だ。