全1760文字
PR

 さまざまな検査が自動化され、効率化や精度向上が図られている。しかし、自動化が難しい検査もある。特に、人間の臨機応変な判断によって対応を柔軟に変えたり、微妙な調整が必要だったりする検査だ。こうした検査では、当面は手作業が残るだろう。

 手作業は、どうしても操作ミスや入力ミス、作業の抜け/漏れなどが発生しやすい。そうしたアナログな手作業をサポートする技術として期待されるのが、音声の活用だ。

音声とデータを相互変換

 シーネットコネクトサービス(千葉市)が2021年に提供を開始した「LISTEST」は、検査や点検業務を対象とした音声システムである。作業者に音声で作業手順を伝える「音声指示」や、作業者の音声を認識して検査結果などをデータ化する「音声入力」機能を持つ(図1)。

図1 音声システムの概要
図1 音声システムの概要
音声システムは、作業手順などの文字データを音声で作業者に伝える「音声指示」機能や、作業者の音声を認識してデータ化する「音声入力」機能を持つ。(出所:日経ものづくり)
[画像のクリックで拡大表示]

 図2に同社の音声システムの構成イメージを示した。音声指示では、まずパソコンから作業手順などの指示内容をスマートフォンなどの通信端末*1に送る。次に、端末に搭載した音声合成エンジン「ReadSpeaker」*2で指示内容を音声に変換し、作業者に手順を伝える。

図2 音声システムの構成イメージ
図2 音声システムの構成イメージ
音声指示(右から左の流れ)では、作業手順がパソコンから通信端末(スマートフォンなど)に送られ、音声として作業者に伝わる。音声入力(左から右の流れ)では、作業者が発声した検査結果を文字データとしてクラウドサーバーに記録・保管する。検査結果はパソコンで閲覧したり、品質管理システムなどに活用したりする。(出所:日経ものづくり)
[画像のクリックで拡大表示]
*1 Android OSの搭載が必要。
*2 HOYAが開発した音声合成エンジン。

 一方、音声入力では作業者が検査結果を発声する。すると、端末内の音声認識エンジン「AmiVoice」*3が、作業者の音声を文字データに変換する。文字データ化された検査結果はクラウドサーバーに保管され、パソコンから遠隔で確認できる。検査結果はユーザーが持つ品質管理システムなどにも保管できる。

*3 アドバンスト・メディアが開発した音声認識エンジン。

 音声指示の内容や結果に応じた指示の分岐は、ユーザーが自由に登録できる(図3)。結果のしきい値を登録し、それを超える場合に再測定を促すなどの設定も可能だ。

図3 音声シナリオ構築画面の例
図3 音声シナリオ構築画面の例
上の行から下の行へ作業が進む。「試験を開始します」という音声指示に対して、作業者が「よし」と発声すると次の作業に進む。2行目の音声指示に対して、読み上げた数値が0から120の間の場合は3行目以降に進み、外れた場合は再試験を促す音声指示が流れる。(出所:シーネットコネクトサービス)
[画像のクリックで拡大表示]

 作業者は音声によって検査手順を1つずつ指示されるので、手順を飛ばしてしまうなどの作業ミスが減る。検査結果はタイムスタンプ付きで記録される。これによって、記録する手間や入力ミスを削減し、結果の改ざんも防げる。